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カーク・ターナーの憂鬱
第9話 商売の都
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ンス氏の肖像画の写真を添えて、一報入れてやるか。

俺はそんなことを考えながら、下船タラップを降りはじめる。静止軌道上から高速で下るエレベーターから見える光景に心を奪われるのだが、それはまた別の話だ。


宇宙暦723年 帝国暦414年 8月末
フェザーン商科大付近の路地
クリスティン・フォン・ウーラント

「姉さま、もう足が疲れたよ。少し休もうよ」
「わかったわユルゲン。でもあんまりのんびりできないわよ?もうすぐ日暮れだもの」
「うん」

座り込む弟のユルゲンを横目に、夕方の様相をしつつある空を見ながら私は途方に暮れていた。事の始まりは、帝国騎士であるウーラント家が政争に巻き込まれ、親族の支援をうけてフェザーンに亡命した事に始まる。政争に敗れたというより巻き込まれた形のウーラント家に、帝国政府も同情したのか、それなりの資産を持ち出せたし、親族から同盟では資産価値が高いらしい絵画なども渡されていた。

フェザーンに到着して2週間。当主であるお父様は、方針を定めるべく連日のように出かけていたが、情報が錯綜しているのか?お悩みのご様子だった。そしてさすがに2週間もホテルの一室に閉じこもっているのは、私はともかく弟のユルゲンには堪える物だった。
お母さまが幼少のみぎりに亡くなって以来。ユルゲンの母親代わりを自認していた私は、気晴らしになればと、弟と一緒に部屋から抜け出し、フェザーンの散策に乗り出した。その結果が今の状況だ。

「ホテルの周りを少し見て回るだけのつもりだったのに」

ため息とともに本音が漏れる。帝国とは違った街並みが珍しかった事と、ホテルに閉じこもっていた反動もあったのか?私たちは興味が惹かれるままにフェザーンの街をうろうろし、結果として道に迷ってしまった。そうして右往左往するうちに、10歳の弟ユルゲンの体力が限界に達してしまったのだ。

「治安維持組織に身分を明かしたらどうなるかわからないし......」

座り込んでしまったユルゲンを横目に、どうしたものかと考える。これが帝国なら、警察官に声をかければホテルまでエスコートしてもらえただろう。ただ、ここはフェザーンだ。対外的には帝国の自治領である以上、亡命したばかりのウーラント家の者が名乗れば、不測の事態になるかもしれない。

「よう!お困りごとかい?」

そんなことを考えていたら、帝国語で声をかけられた。視線を向けると私と同年代のオレンジ色の髪の少年がこちらを見ている。悪印象はないが、状況が状況なので正直警戒した。

「あ〜。困ってないなら俺は消えるよ。ただ、オルテンブルク家が後援されているイーセンブルク校でお世話になったんだ。亡命者が困っているなら無視するのも気分が悪いからな。声をかけたまでだ」

そう言いながら敵意がないことを示す
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