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カーク・ターナーの憂鬱
第9話 商売の都
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宇宙暦723年 帝国暦414年 8月末
惑星フェザーン 軌道エレベーター 駐船区画
カーク・ターナー

「前世でもそうだったが、金ってのはある所にはあるもんだなぁ」

うろ覚えな前世の記憶の中でも、地球と言う惑星を飛び出した宇宙船からの映像も見たことがあった。それに最寄りとは言え、月面着陸の記憶もある。同盟で経験した出来事は、星間国家と言う前世でいう未来世界でありながらも、ある意味、想像の延長にある光景だった。

「軌道エレベーターなんて、小説の世界だろ。まさか自分の目で見れるとはなぁ。エコニアにいたら映像で見れたかどうかの光景だな」

肉体に引っ張られているのか?軌道エレベーターの巨大さに引きずられているのが?妙にワクワクしている自分がいた。総工費っていくらぐらいなんだろうか?列島改造論で考えた高速道路と新幹線の総工費なんて比にならない金額になるだろう。ただ、星間国家なら資源は前世の数千倍のスケールで用意できる。案外、俺が考えるよりは安上がりなのかもしれなかった。

「おーいターナー。ちゃんと下船準備してるか?」

俺が浮かれ半分で思考していると船内通信でキャプテン佐三が声をかけて来た。俺が乗船しているエンブレム号はフェザーン本星に到着し、軌道エレベーターの一区画に入港した所だ。本来なら航海士見習いは下船しないで乗船待機する。ただ、亡命業務を担当するので、フェザーンでは下船する人員に含まれていた。

「船長、もちろん準備できてます。もともと荷物も少ないですから」

取りつくろう様に俺は応答する。わざわざ船長が俺に声をかけてきたのも、おそらく亡命案件があるからだろう。フェザーンに近づいた段階で、積み荷の売却先はシステム上で決めているはずだ。すでに船倉からの搬出作業は始まっている。積み荷の代金の入金が確認できた時点で、事前に予約していた発注を確定し、今度は搬入作業が始まるだろう。実務だけならわざわざ下船する必要もないんだが、馴染みの独立商人との顔つなぎや情報収集の為に地上に降りるわけだ。

「初めてのフェザーンだ。浮かれるのも分かるが、地上には帝国人もいるからな。浮かれすぎないように気をつけろよ?」

ニヤニヤしながら船長が注意点を伝えてくる。今更のようにも思うが、航海士はそこそこ高給取りの部類だし、航路によっては数ヵ月船内で過ごすことになる。初めてのフェザーンで羽目を外しすぎてしまい、数か月分の給与を使い果たして文無しになる航海士の話は、同盟系の商船ではよく聞く話だった。

「笑い話の先例をなぞる趣味はありませんよ。仕送りを減らすわけにもいきませんからね。今日の自由行動では、帝国弁務官府とフェザーン自治領主府、あとは商科大を見て回るつもりです。明日は船長に同行するんですよね?」

「ああ、状況によっては亡命
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