第8話 雇用主と宇宙
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ももう少し考えてもらいたいですぜ」
「そういうな。エネルギー系は生活必需品だ。多少課税しても売れ行きが鈍らないからな。だがそのせいで俺達もだが、なるべくフェザーン系で補給する流れが出来てる。軍を除けば商船はエネルギー系の最大消費者だ。俺達に負担を押し付けるような政策は、本来悪手なんだがなあ」
「例の噂、本当なんでしょうね。情報交通委員会と経済開発委員会にフェザーン系から賄賂が流れてるってやつ。奴らの懐に入る金額の何百倍も同盟からフェザーンに資本流出してるってのに」
「政界の中心はバーラト系の中でも政治家の家系の独壇場だからな。同盟全体の利益より、自派の利益優先になっちまってるんだろうな。もっとも、それを理解しつつもそれに乗っかって経費削減してる俺達も同じ穴のムジナなんだろうが」
示し合わせたかのように俺と機関長が同時にため息をつく。視線を向けると航海長もやれやれと言った表情だ。まあ、政治家を敵に回したら同盟で商売をするのは難しくなる。俺たちにできるのは与えられた環境で精いっぱい儲けるだけだ。
「それとな、ターナーを気に入ったのはわかるが、あいつが一人前の航海士になるには、艦橋業務も覚えねえといけねえんだ。抱え込むのもほどほどにな」
「分かってまさぁ。ただ、ほとんどの見習いは機関業務なんて触り位しか学ばねえんだ。なかなかある事じゃねえんだから、多少は大目にみてくれよ」
逃げるように機関長が通信を切る。まあ、もうしばらくはそっとしておくか。惑星ウルヴァシーに関しては、俺は別の事情もあると考えている。惑星自体の資源の有望性に留まらず、銀河の資本の中心になりつつあるフェザーンにも近すぎるのだ。今は良いかもしれないが、いずれ経済成長が進めばバーラト系に匹敵する可能性がある。同盟の中心はあくまでバーラト系で良い。自分たちに成り代わる存在など認める訳もない。
モニターには静止軌道上にある宇宙ステーションが映る。建設したのはフェザーン系の資本だ。最新の施設で運営効率も高い。その上、補給物資の質も高く、価格も安い。このままフェザーン資本の流入が続けば、同盟のエネルギー業界はフェザーンに牛耳られる。そうなれば宇宙のこっち側の商船は、フェザーンの意向を無視できなくなっちまうんだが。
「そうしてフェザーンが肥太るわけか。全くどうしたもんかね。商船一隻の駆け出し零細資本じゃ、わかってたって出来ることはほとんどないんだよな。んでわかっちゃいても資本蓄積の為にはフェザーンに行かない訳にもいかないというね」
ぼやきながら最終チェックの開始を始める。個人的に面識があるフェザーン系の独立商人達は、腹黒な所を除けば良いやつなんだがなあ。なにより亡命業務は美味しいし、エンブレム号が業界で認められるためにも外せないビジネスだ。零細資本でビジ
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