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カーク・ターナーの憂鬱
第8話 雇用主と宇宙
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りにある。
経済を支える商船乗りが徴兵される可能性は低い。ただ、万が一徴兵されたとしても、機関士としての知識があれば、最前線の陸戦隊に配属されるリスクは低くなる。まあ、処世術の一環だな。

全く予想外の展開だったが、航海士見習いの中でもホワイトカラー志向が強いのか、艦橋勤務の業務を学びたがる奴が多いらしい。初めに機関業務を希望する航海士見習いは皆無に近いらしく、そんな中で機関士一筋30年の機関長は、機関業務を第一希望にした俺を、それだけでかなり気にいってくれたようだ。
俺は経験したことがないが、希望者の少ない部活ほど、入部希望者がかわいいような感覚なのだろうか。とにかく、航海士見習いとしての俺のキャリアは、思った以上に良い環境でスタートした。仕送りもちゃんと出来るし、この好待遇に応えるべく、俺はしっかり務めるだけだ。


宇宙暦723年 帝国暦414年 7月末
惑星ウルヴァシー 静止軌道上 エンブレム号 
キャプテン佐三

「素人の私から見ても、この惑星はかなり有望そうですが、開発計画は無かったのでしょうか?」

「計画自体はあったそうだが、艦隊拡張予算の為に予算を取られて計画は白紙になったそうだ。あとは有望すぎるってものあるかもな。水資源も豊富だし、フェザーンからも近い。本当は亡命系が入植したがったそうだが、ここはバーラト星系とフェザーンの主要航路を押さえる星系でもある。亡命系に任せるには惜しいしリスクもある。とは言え、艦隊拡張の為に予算も割けない。結果放置されたままってわけだな」

「そうなんですね。私の出身地のエコニアよりもかなり環境が良さそうですし、放置されているなんて勿体ないと思いまして」

そう言いながら、首都星ハイネセン並に青い惑星ウルヴァシーが映るモニターに視線を向ける新入りのターナー。井上も良い人材を紹介してくれた。ビジネスの場で身を立てて来た俺から見ても、将来が楽しみな奴だ。

「機関長から話は聞いてる。素の話し方をしても良いんだぜ?」

「さすがに雇い主との関係はちゃんとしておきませんと......」

少し困った表情をしながらターナーは答えた。確かに同僚と言えなくもない機関長と同じように気安く接するにはまだ接した時間が少ないか。機関長がつきっきりで機関業務を叩き込んでいるから、ターナーは艦橋にいる時間が少ないんだよな。商船乗りは万が一の時は命を預けあう仲だ。本当なら艦橋詰めの連中とももう少し絆を深めてもらいたいと所だが......。

「では、機関室に戻ります」

ターナーが一礼すると、艦橋から退出していった。そのタイミングでモニターから着信音が響く。通話ボタンを押すと機関長がモニターに映った。

「艦長、補給完了だ。悔しいとこだが、フェザーン系は質も良いし価格も良心的。本国に
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