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カーク・ターナーの憂鬱
第7話 友人
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宇宙暦723年 帝国暦414年 6月末
惑星シロン 宇宙港
フレデリック・ジャスパー

「ジャスパー。簡単にくたばるなよ」
「お前こそな」

同盟の若年層で流行っていると言うお互いの拳をくっつける挨拶を交わすと

「またな」

と言い残して、この2ヵ月、毎日のようにつるんでいたターナーは、搭乗口へ進んでいった。チェックインをすませ、ゲートをくぐると、こちらを振り返り、手を振ってからシャトルへ消えていく。
奴のオレンジの髪は人が多い搭乗口でもよく目立った。俺も応えるように手を振る。やけに寂しく感じるのは、あのオレンジの髪が目立つせいか?それとも、唯一の俺の理解者が旅立ってしまうからだろうか。

俺は、搭乗口から離れるように屋上へつながる階段へ歩みを進める。思い返せば面白い奴だった。オレンジの髪にエメラルドの瞳。それだけでも目立つのに妙に存在感がある奴だった。イーセンブルク校の同年代の子女が、騒ぐのも無理はなかった。
当然面白くない連中が絡むのも時間の問題だったが、学習意欲の高いやつだったから空き時間はほとんど図書室だ。あいつは性悪だから、もしかしたら人目があり、反撃の口上を作りやすい図書室で待ち構えていたとしても、俺は驚かない。

社交ダンスも初めからうまかった。社交ダンスは未経験者ならともかく、経験者ならリードする男性の力量がかなり重要だと知っている。力量がそこそこなら勿論、自分の力量に自信がある子女も、力量の低いパートナーを選べば、無様な有様になる可能性もある。変に存在感のあるターナーは、ダンスの授業では引く手あまただった。その段階では、俺とつるむ仲になっていたからイザコザは無かったが、俺の存在が無ければ一悶着起こっただろう。

階段を上り、ドアを開ける。強めの風に髪がなびく。安全対策で備え付けられたであろうフェンス近くのベンチに座ると、エンジン音を響かせながら滑走路に向かうシャトルが目に入る。

「五分と五分か......。そんな感覚は知らなかったな」

庶子とは言ってもオルテンブルク家は侯爵家だ。外食すれば支払いを持つのは当然だったし、その代わりに周囲の連中はおもねって来るわけだ。

「仕送りを減らせないから安い店にしてくれ。奢り返し出来ないと、俺たちは五分じゃなくなる。子分になるつもりはないからな」

それまで通っていた貴族向けのレストランから、労働者向けの居酒屋に場を変えたのも奴の影響だ。最も、お高く止まった貴族向けのレストランより、好みに合ったのも事実だ。大皿に盛られた料理を、気の知れた仲間とつまむのは、予想以上に楽しかった。

「情勢を考えれば、士官学校に行くのはむしろ正解だ。俺も経済面が何とかなれば士官学校を志望してたよ」

やれやれと言った所作をしながら、あいつはボヤいて
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