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カーク・ターナーの憂鬱
第7話 友人
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宇宙暦723年 帝国暦414年 4月末
イーセンブルク校 図書館
カーク・ターナー

「この図書館には、我らが保存してきた貴重な書籍が多数あるというのに」
「まったくだ。その貴重さも理解できぬ平民が、身の程を弁えずに当然の様に触れるとは」

やっと来たか。まぁ、事前に担任のフラウベッカーからも話を聞いていたし、正直、いつ来るかと期待していた部分もある。ここはキッチリ躾させてもらうか。ただなぁ、貴族感覚の子弟を躾ける一貫とは言え、異文化圏からの留学生は、接し方次第でシンパにもできると言うのに。
バーラト系とのいざござが遠因なんだろうが、ここでマナーを修めた連中は、亡命受け入れに関わるんだ。アンチ亡命派にするのは百害あって一利なし......。なはずなんだが、まあ、亡命派が最終的に損をしようが得をしようが、俺の知ったことじゃない。しっかり与えられた役割を果たしますか。

「勉強になりますねえ。同盟の田舎ですら図書室では静かにすると、子供ですら理解しております。亡命系ではむしろ騒ぐようですね。これは大変勉強になります。感謝せねば。お名前をうかがえますか?」

「貴様!我らを愚弄するのか!」
「下賤の者に名乗る名などない。この礼儀知らずめ」

まあ、案の定だ。少し煽っただけで噛みついて来た。なんだかんだ言ってるが、こいつらには名乗れない事情がある。そもそもイーセンブルク校を始めとした亡命派の教育機関への受け入れは、亡命派の首脳部が決めた政策でもある。
貴族社会風の環境で育った彼らにとって、異分子である俺を気に入らない、排除したいとしても、それを公的な場で主張すれば、当主や寄り親の意向に反する事になる。それは彼らの育った環境ではタブーな事だし、それをやれば、彼らが維持している貴族風の社会自体の否定につながる。

だからこそ、せいぜいやれる事は聞こえるように嫌味を言うくらいだ。まあ、かわいいもんだよな。

「左様ですか。亡命系では名を名乗らぬ場合があるのですね。ちなみに同盟では、治安組織に名を聞かれて名を名乗らないと後ろ暗い所があると判断されます。お互いの価値観の相違を学べましたな。それは何より」

フムフムと勉強になったかのような所作をしつつ、小馬鹿にしたような表情でさらに煽る。子供相手に大人げない気もするが、実はこれもフラウベッカーから事前に『ちゃんと対応する様に』と言われた結果だ。

俺が短期入学しているイーセンブルク校は、設立したのが伯爵家だし、その寄り親のオルテンブルク家はもともと侯爵家だ。当然、亡命系の貴族でも貴意が高い連中が集まっている。ただし、講師陣は貴族階級とは限らない。なので、生徒同士の争いに講師陣は基本関与しない。ただし、決闘などは禁止されているし、これを破ればイーセンブルク家だけでなくオルテンブルク
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