第5話 出立
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、井上商会のみんなや収容所の面々の顔が頭をよぎったが、それでも変な高揚を感じていた。
トーマスから半年遅れだが、俺はこの銀河の田舎代表のようなエコニアを、心のどこかでずっと飛び出したかったのかもしれない。トーマスはまだ基礎訓練中って所だろうか。どうせなら小さいとは言え、曲がりなりにも店舗の責任者だった経歴はあるんだ。うまく立ち回って補給部門にでも潜り込めればなあ。
だが、これからの俺にはあまり人の心配をしている時間はないかもしれない。これから亡命系の中心地であるシロンに向かい、亡命貴族が経営する社交マナーの塾に短期入学する。俺が航海士見習いにこんな若年でなれるのは帝国からの亡命者対応を引き受けるためだ。
さすがに公爵家や伯爵家クラスの亡命は少ないらしいが、亡命業務に関わる以上、帝国流の社交マナーも学んでおく必要がある。そんなもん通信教育にしとけとも思うが、立場なんかで口上も変わる。それに通信教育の教材にしないことで、亡命系の食い扶持を守る意味もあるんだろう。この分野は亡命系の独占市場だからな。さすがのバーラト系も手が出せないらしい。
まあ、よくよく考えれば、短期間とは言え学校に通うのは、カークとしての人生では初めてだ。エコニアでは後輩の面倒も見てきたけど、ほとんどの時間を大人と過ごしてきたし、同世代との接し方を学ぶ意味でも丁度良いかもしれない。
そんな事を考えているうちにシャトルは成層圏を抜け、文字通り惑星としてのエコニアが、シャトルの窓から見える。水に乏しいエコニアは、地球とは違って全体的に茶色い印象だった。決して美しくはないし、パッともしない光景だ。でもそれでよかった。同盟圏内に多くあるであろう、こういうパッとしない星系を少しでもまともにしたい。それが俺の今世での志みたいなものになりつつあった。
しばらくすると軌道上に待機していた商船にシャトルがドッキングし、俺は小さめの客室に潜り込んだ。成人男性なら体格によってはかなり狭く感じただろうが、幸いなことに俺はまだ13歳。シロンまでの船旅は快適な物になりそうだ。
そして何より、航海士見習いの話を承諾して、井上商会を退社した先月から、航海士見習いとしての給与も支給されている。衣食住に不便しない以上、今の俺には怖いものはないのだ。
宇宙暦723年 帝国暦414年 2月末
惑星シロン ジャスパー家
フレデリック・ジャスパー
「ふざけるな!なんで今更、俺が帝国の社交マナーなんてもんを学ぶ必要がある?」
「ではもう一度申し上げます。フリードリッヒ様は庶子とは言え、オルテンブルク家の直系に連なる方です。旦那様の戦死を機に、後を継がれたリーンハルト様の後見を大旦那様がされる事となりました。オルテンブルク家内部は形式の面では整いました。
ただ、亡命系の雄であるオルテン
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