第5話 出立
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宇宙暦723年 帝国暦414年 2月初旬
惑星エコニア 簡易宇宙港 搭乗口
カーク・ターナー
「んじゃ、父さん、母さん 行ってくるね」
「カーク、くれぐれも身体に気を付けてね。無理しちゃダメよ」
妊娠初期になり、少しおなかが目立ち始めた母さんが、別れを惜しむかのように抱きしめてくる。少し気恥しいが、何事も無くても数年は会えない。下手したら最後の機会になるかもしれない以上、ことさらに逆らわずに好きにさせた。父さんは、申し訳なさそうな表情で、俺と母さんに視線を向けている。
「父さん、遅かれ早かれ、俺はエコニアから飛び出していたよ。過ぎたことは気にしないで、母さんと弟か妹を宜しくね。俺もガンガン仕送りするからさ」
俺がそういうと、父さんは頷きながら感極まったのか男泣きを始めた。まあ、父さんがもう少し早く立ち直ってくれていれば、俺も別の道を選んだ可能性もあった。ただ、遅かれ早かれエコニアを飛び出していたのは確かだろう。
今の同盟の在り方だと、地方星系は表現を選ばなければ搾取の対象だ。身を立てて、本当の意味で自分の意志で人生を決める為には、捕虜収容所以外、大した特徴もないこの惑星に留まる判断は、残念ながら出来なかった。
年始に井上オーナーから航海士見習いの話を聞いたとき、俺は2つ返事で受けることに決めた。もちろん年齢の問題から両親の承諾が必要だった。当然両親に相談したし、心が折れた父さんに代わって、母さんと二人三脚で家計を支えてきた俺を、二つ返事で航海士見習いにするのは、特に母さんにとって重たい判断だっただろう。
ただ、二人目の命が母さんのお腹に宿ったのをきっかけに、身重の妻だけを働かせるのはさすがに父さんの良心が許さなかったらしく、荒れ地の開墾を俺の目から見ても人並み以上にこなすようになった。もし父さんの心が折れたままなら、身重の母さんの双肩に家計が圧し掛かる。経済面はともかく、精神面で不安があったのも事実なので、何がきっかけになったとは言え、ターナー家にとって良い変化だと思っている。
『14時発のシャトルに搭乗予定の方は、搭乗口までお急ぎください。まもなく出発時刻となります』
アナウンスをきっかけに、母さんが抱きしめるのをやめ、確かめるように俺の肩に触れた。
「んじゃ、行って参ります!」
両親の寂し気な視線を振り切るように別れの言葉を述べると、俺は搭乗口へ急いだ。名残は尽きないが、我が母星のエコニアは、この銀河でも有数のド田舎だ。シロン行きの便は月にわずか一本。今後の予定が詰まっている以上、一か月も時間をロスするわけにはいかない。
シャトルに搭乗し、窓際の指定席に座ってしばらくすると、定刻となり、シャトルは加速を始めた。前世で旅客機にのった経験はあるが、今世ではこれが初めてだ。両親を始め
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