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カーク・ターナーの憂鬱
第4話 オーナーの悩み
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象になる可能性は十分あった。

「当初は本店の後継者。トーマスの事があってからはマスジットの陣頭指揮を任せたかったんだがなあ」

自由惑星同盟でも田舎も田舎な惑星エコニアではあったが、彼は惑星エコニアで商売を始めて心から喜んだ出来事が2回あった。一回目はトーマスが入社を決めてくれた事。そしてもうひとつが、彼がオレンジと呼んで可愛がっているカークが入社を決めてくれた事だ。

トーマスも彼から見て優秀な人材だったが、カークも同様だった。更に、オレンジの髪にエメラルドの瞳をもち何かといるだけで目立つ存在だ。そして不思議なことに、自分も含めて周囲の大人を後見役にしてしまうような、変な魅力があった。収容所の捕虜たちもなんやかんやとカークの面倒を見たがる。そして何より人の数倍勤勉だった。

もうすぐ13歳になるだろうが、普通免許だけでなく様々な資格を取っていた。少しでも家計を助けたいという想いもあるのだろうが、首都星系の同年代が遊びに夢中になる年頃から、ずっと努力している。トーマスの影響もあるのだろうが、後輩への指導もしっかりしたものだった。去年の年末には、いずれはトーマスとカークに両輪として井上商会の未来を背負ってもらえれば......。そんな事を考えていた。

「しかしなあ。この話も正直不義理はしたくない。それに捕虜収容所も完工してしまうしなあ」

手元のタブレットに視線を送ると、一通のメールが目に入る。当初は苦渋の決断ながらもトーマスに話を持って行ったが、彼は家庭の事情もあって軍への入隊を決断してしまった。メールの主にも、話はしてみるが、あまり期待をしないで欲しい旨は伝えていたが、なかなか候補者が見つからない旨の追伸が、メールの内容だった。

「そもそもフェザーンなんて認めちまうからこうなるんだよ」

メールの送信主は、若い頃から商売を志し、いずれは独立商人になろうと切磋琢磨してきた親友だった。独立という意味では一歩先んじたが、独立を心から祝福してくれ、井上商会立ち上げ初期の連帯保証人にもなってくれたし、少なくない餞別をくれた人物でもある。

そんな親友が自分の商船を持ち独立商人として独り立ちするともなれば、自分にできることなら最大限応援するつもりだった。それなりに人脈もあり優秀なはずの親友が困っているのが帝国語が話せる航海士見習いの確保だった。

コルネリアス1世の大親征を跳ね除け、軍備増強に政策を振り切った同盟は、30年前に行われたシャンダルーア星域の会戦では快勝した。それもあって、帝国からの亡命者は増加傾向にある。
当然、独立商人として商船を持つうえで、亡命者への対応が出来なければ2流扱いされる。そして亡命者の中にも未成年が含まれるので従士役を任せられる帝国語に堪能な若年者を備えて1流とされていた。

ところが、
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