第3話 別れ
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れに、政府の方針で家系の存続の担保の為に、その世代で志願者がいれば、徴兵順位を下げてもらえるんだ。井上オーナーから航海士見習いの話も貰えたんだけど、仕送りできる金額とか、僕が志願すれば徴兵順位を下げてもらえるとかさ。色々考えたら軍に志願するのが、今の家の状況だとベストなんだよ」
「やめた方が良いよ。トーマスは俺みたいな子供にもちゃんと接しちゃうお人好しだし、井上オーナーなんてこんな片田舎の商会だから成立してるけど、首都星系なら一瞬で食い物にされる甘ちゃんだよ。軍に入隊したら無能な上官の命令も聞かなきゃだし、トーマスは世渡り下手なんだから戦死しちゃうよ!」
「確かに僕は世渡り下手だからなあ。とは言えもう少し表現に気を使ってくれても良いんだよ?それにさ、どっちにしても、入植を理由に父さんが徴兵免除されてる以上、弟が出来れば僕に徴兵令状がくる可能性は高いんだ。なら志願しといたほうが、メリットもある。
それに帝国語をちゃんと日常レベルで使えるしね。もしかしたら情報部だったり、フェザーン駐在武官の従卒になれるかもしれない。他の志願兵に比べたら、生き残れる可能性はあるさ。それにもう志願しちゃったから、今更取り消すわけにもいかないよ」
自分に言い聞かせる様に話すトーマスから、覚悟みたいなものを感じてしまい。俺はそれ以上何も話せなかった。言いたいことは沢山あったが、もうトーマスが意を決した以上、俺から言えることは何もなかった。
でもさぁトーマス。バーラト系のエリート達は、地方星系の若者の命なんて何とも思っていないよ。帝国語を日常会話レベルで話せるのも、やばい方向に働くかもしれない。階級が低い状況で帝国語に堪能なんて状況だと、最悪最前線の陸戦隊に配属されかねない。最終的な意思決定に関わる部門に地方星系の二等兵なんて加える訳がない。
あくまで現場レベルの情報収集で、帝国語が活きる陸戦隊に押し込まれる可能性が高い。所属部隊が勝ち続けられれば良いけど……。でも俺ですら理解している事なんだ。トーマスも全部理解したうえで志願したんだろう。お人好し過ぎるし、なんとか翻意させたいけど、俺が何を言っても無駄だろうな。
「簡単に戦死しちゃ嫌だぜ。トーマスには俺の兄貴分として結婚式でスピーチしてもらう予定なんだからさ」
「うん。そんな将来があれば、きっと楽しいね」
そんな言葉を交わしながらトーマスと握手を交わしたが、彼がこの約束を守れないと思っていることを感じていた。数年の付き合いだが、トーマスは約束をする時、約束を守ると必ず断言していた。
それをうやむやにする形にした以上、彼も生き残るのは難易度が高いと感じているのだろう。とは言え年下の俺の願いを誠実な彼は無下に断る事も出来ずに、こういう形にしたのだろう。
トーマスのような誠実な若者が、自分
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