第3話 別れ
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「これで収容所の売店の販売効率が多少は上がるからオレンジは気にするな!」
なんて井上オーナーは言ってくれたし、俺がおっちゃん達と作業することで売店の売り上げアップが見込めた事もあっただろう。でも変に恩にきせずに気持ちよく体制を整えてくれたオーナーには、いつか恩返しをしたいと思っている。
「よし、キリが良いし今日はここまでにしよう。オーナーの心意気で、今日は坊主がビールを多めに納品したそうだ。坊主の顔を立てる意味でも、自分へのご褒美って意味でも、一本位はビールを飲んで英気を養ってくれ。丁度、給料日でもあるしな」
監督役のおっちゃんが声を上げると、うれし気に作業に参加していた大人たちが応じた。収容所では3食提供されるが、嗜好品は別枠だ。酒ももちろん別枠だし、捕虜の中には収容所外の労働で蓄えを作り、実際に家庭をもった者も出てきている。
給与面や勤務体制の兼ね合いから、同盟軍の二等兵ではなかなか家庭をもつことは出来ないだろう。そういう意味では、捕虜の待遇が二等兵よりマシという笑い話から実例が現れた形だ。この時点で、俺は何があろうと、同盟軍の二等兵にはなるまいと心に決めた。
もともと地方星系の生き血を吸うようなバーラト系には思うところがあったし、戦時とはいえ、異を唱えない地方星系の住民たちにもイラ立ちを感じている。いくら戦時とはいえ、ここまで不平不満を我慢するとなると、民主主義を標榜しながら、その実、ファシズム化していたりするんだろうか?
「カーク、お疲れ様。カークのお陰で売店の売り上げも右肩上がりだよ。ハイ、袖の下」
そんなことを考えていると、収容所内の売店を任されているトーマスが、いつものように伝票とミルク入りの瓶を刺しだしてくる。
「ありがたく頂きますとも......。って、やっとトーマスにもお返しができたと思ってるから、別に気にする必要はないと思うけど......」
「気にする必要はないよ。もっと威厳なり人徳なりが僕にあれば、言葉だけでも足りるのかもしれない。でもそんなものは僕にはないからね。感謝を表すには言葉だけでなく行動を旨としているわけさ」
「それは良い心がけだね。もっともご利益を散々受けたうえでの話だから、評価に対しての客観性は皆無に近いけど」
俺がそう返すと、トーマスはうれし気に笑みを浮かべた後、意を決した表情をした。
「カークは僕の弟分だし、先に話しておくね。実は軍に志願することに決めたんだ。今月でちょうど16歳になるしね」
「えっ。このまま井上商会に勤めるんじゃなかったの?しかも今更、志願したって二等兵からのスタートだろ?トーマスが二等兵なんて、人材の無駄使いだ。なんで......」
「うん。実は弟か妹が出来たんだよ。僕の稼ぎを入れても、将来の学費を賄うのは難しい。そ
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