第2話 今世も今世
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、父が陥った事情も良く理解できている。ただ、母からするとあくまで10歳の少年だ。幼い我が子が家計の足しにすべく働いているのに、大黒柱であるはずの父が、働きもせず、ましてや団らんの場であるはずの夕食にすら同席しないのは、心苦しいのだろう。もっとも俺からすると、今世もかぁという感想しかないのだが。
両親たちは、もともとはエコニアのようなド田舎ではなく、もう少しまともな経済状態の星系の出身だ。そんな二人の人生を狂わす出来事が起きたのは、俺が5歳の時。多産推奨の同盟において一人目も落ち着いたし、二人目も......。みたいな状況で、大規模緑化事業を前提としたエコニアへの入植話が舞い込んだのだ。
結婚の際に、将来は常に家族で一緒にいられる農場を持ちたいという母の夢を聞いていた父は、当時のターナー家の貯蓄と、両親の退職金をつぎ込む形でこの話に乗った。ところが、いざという段階になって、宇宙艦隊の増設案が浮上し、それにはじき出される形で緑化事業の予算は削られてしまった。
今まで積み上げてきた物を失った父は、そこで心が折れてしまったようだ。最も、心が折れてしまったのは父だけではない。トーマスの父親もそんな感じだし、俺の父親世代は昼間から酒場にいる人が多い。母からしても自分の夢のために父がすべてをつぎ込んだこともあり、強く出れずにいるようだ。
とはいえ多少はバーラト系の政治家連中も良心があったらしい。緑化事業の中止をした代わりに、初期の入植家庭には開拓助成金を出している。幸か不幸か、そのせいで父親世代は働かなくても食べていけるだけの収入はあった。ただ、その助成金は父親の飲み代になるし、母は、助成金支給の最低条件を満たすために、よく言っても荒野の片隅を細々と耕しながら生活している。
入植第一陣である俺を雇用すると、様々な助成がつくのもそんな背景がある。ただなあ。父親からすれば、財産を吸い取ったうえでの棄民政策としか思えないだろう。
助成金がなければ破綻する経済状態に追い詰め、なんとか子供を育てたとしても、身を立てようと思えば、命に危険がある軍か商船乗りになるしかない。それなりの学があれば尚更、自分の状況に絶望してしまうのも無理はなかった。
でもさ、前世でも俺の父は事業に失敗して結構厳しい経済状況だったんだ。こんな所まで前世を踏襲するかねぇ。もっとも、10歳の若造でも稼ぐ手段がある今世は、まだマシかもしれない。悪戦苦闘しながら生計をたてる母親を微力ながらも支えることができるのだから。
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