第2話 今世も今世
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宇宙暦720年 帝国暦411年 4月上旬
惑星エコニア ターナー家
カーク・ターナー
「カーク、おかえりなさい。毎日済まないわね」
「良いんだよ母さん。エコニアじゃ、俺くらいからみんな働いてるんだから」
井上商会からの差し入れがつまったかごを、アイランドに置きながら、今世の母親に応える。俺のオレンジの髪は母さん譲りだ。でも長さは俺より少し長い程度。女性からするとショートカットってやつかな。こんな荒涼とした星じゃなければ、他の髪型も候補になるんだろうけど。それなりの土埃にさらされるエコニアの女性陣の髪は、基本短めだった。
「晩御飯まで少しかかるから、さっぱりして部屋でゆっくり待って頂戴。出来たら声をかけるから」
「そうするよ」
キッチンに向かう母の背中に声をかけながら、洗面所へ向かう。サクッと来ていた服を脱いで、シャワールームへ。もう慣れてしまったが、入植が始まって間もないエコニアでは、湯船までは用意されていない。物心ついた時、日系を思わせる名前はあるのに、入浴の文化は無くなったのかと、絶望しかけた。
ただ、首都星系をはじめとした経済的に豊かな星系では、ちゃんと入浴の文化はあるらしい。エコニアを飛び出したいと思う要素の一つに、風呂に入りたいというのがあるのは、俺が前世の記憶持ちだからだろうか。
もっとも、風呂がないのも、エコニアへのインフラ投資が少ないことが影響している。ターナー家を含め、エコニアのほとんどの物件はオール電化でガスが引かれていない。シャワーから出てくるお湯も電気で温めたものだ。そこまで出来るなら湯船も用意してくれとも思うのだが、前世で言う追い炊き機能をメンテナンスフリーで実現するのが難しかったらしい。
自由惑星同盟はもともと帝国の収容所から脱出し、一万光年を旅した人々が建国した。建国時の人口はわずか16万。当然、国家としてのマンパワーは慢性的に不足していたから効率重視が基本だ。風呂のためにガスも引くくらいならオール電化で済ませるというのも、同盟らしいといえばらしかった。
さっさとシャワーで汗を流し、室内着に着替えて自室へ向かう。階段を上がって右手の手前のドアが、俺の部屋だ。右手奥の部屋は空室。俺の弟か妹が生まれれば、そこの住人になるかもしれない。左手のドアはメインの寝室。両親の部屋だ。自室に入り、年相応の学習デスクに座ると、タブレットに充電コードを刺してから、昨晩の続きから通信教育の動画を見始める。このタブレットも、政府の補助金で支給されたものだ。
もっとも、経済的にまともな星系では、前世よろしく、年齢に応じた学校が用意されている。エコニアがもう少し経済発展すれば、初等学校くらいは設立されそうだが、前にも言った通り、世に出るために一定数以上の若年層はエコニアの外に活路を求めている
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