第1話 田舎も田舎
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の仲だ。仕事を一から教えてくれた彼は、俺にとって母以外では数少ない頭の上がらない人物だ。もっともまだ14歳とは言え、誠実で偉ぶるところがなく、年下の俺を一人前として扱ってくれる。
あやふやな前世の記憶も合わせると、初等教育の教師をすれば、さぞかし好かれるだろうと思わせる人物だった。あいまいながらも前世の記憶がある俺にとって、何かと心から称賛してくれる彼との時間は、気恥ずかしいものになることが多かった。
「将来かあ。カークはまだ10歳なんだから……。とも言ってられないか。学費が用意できないとなると、身を立てるには見習いとして商船に乗るか、軍に志願するしかない。人文系の奨学金はほぼ下りないし、理工系の枠は、ハイネセン系でほぼ独占状態だしね」
経済的には首都星系であるバーラトと比較するまでもない地方星系の多くは、戦争を理由に大した開発援助も受けられず、弱者のまま据え置かれている。地方星系の若者が世に出ようと思ったら商船にのるか軍に志願するくらいしか道がないのが実情だ。
「捕虜がアドバイスするのも何だが、軍はあんまりお勧めしないぜ。坊主はともかく、店長はなあ。誠実すぎるから、あほな上司にでも当たったら使いつぶされちまうんじゃないか?もっとも、帝国みたいにお貴族様がいない分、そういうことも少ないのかもしれないが」
「誉め言葉として受け取っておきますよ。良さそうなリンゴが入ったんです。帰りに見ていってください」
積み下ろしが終わった頃合いで、飲み終わったミルクの瓶をトーマスに渡し、運転してきた配達車に乗り込む。トーマスとおっちゃん達が手を振るのに応えながら、ハンドルをこの惑星唯一の都市、エコニアポリスへ向けた。
荒涼とした荒れ地を、土埃を上げながら進む。緑化計画が実行されていれば、幹線道路としてしっかり舗装されていた未来もあっただろうが、実際は土壌硬化剤で簡易舗装されただけだ。これがそれなりの星系なら自動運転システム用のセンサーを埋め込み、最低でも2車線の幹線道路になっているだろう。
「もっとも、ろくに投資もされないからこそ、俺みたいな子供にも仕事があるんだろうけど」
思考が漏れるように独り言をつぶやいてしまった。幸い今は車内に一人きり。自動車特有のエンジン音だけが返事をするかのように響く。
「インフラ整備が追い付かないせいで、星間国家の時代にも関わらず、内燃機関だもんなあ」
個人的には、前世で聞きなれたエンジン音を気に入っていたし、前世では夢の施設だった核融合発電所も実用化されているとはいえ、入植が開始されたばかりの惑星では、そんな莫大な電力ニーズがあるわけもない。適正規模の投資だと言われればそれまでだが、電力需給に大きな余剰がない以上、大規模資本の投資先に選ばれることもない。
「身を立てる為には、商
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