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カーク・ターナーの憂鬱
第1話 田舎も田舎
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宇宙暦720年 帝国暦411年 4月上旬
惑星エコニア 捕虜収容所
カーク・ターナー

「坊主、相変わらず頑張ってるな。感心感心」

「そういうなら、帰りに何か買っていってよ。今日はうまそうなリンゴが入荷してたし。おっちゃん、リンゴが好物だっただろ?」

「坊主にはかなわねえな。この荷下ろしが終われば、今日の予定は終わりだ。帰りの楽しみにしとこうか。それにしても坊主は大したもんだ。将来が楽しみだな」

「毎度あり!って、同盟の中でも田舎も田舎だよ。惑星エコニアはさ。正直、俺の家より収容所の方が小ぎれいな位だし。この星から出ないことには、明るい将来なんてねぇ」

「違いないな。そういう意味では俺たち捕虜とあんまり変わらないのかもしれねえな」

少し悲しげな表情をしながら俺の頭をなでるおっちゃんと、同じような表情で頷く周囲の大人たちは、捕虜を表す同じ色の作業着を着ている。彼らは、惑星エコニアが属している自由惑星同盟と戦争中である銀河帝国の軍人たちだ。もっとも、彼らは彼らで色々大変らしい。

望郷の念はあるようだが捕虜となった以上、帰国したら帰国したで最悪処罰される可能性があるらしい。貴族様ならともかく、ここに収容されているのは佐官以下の軍人だ。大した後ろ盾も持たない彼らからすると、帝国では叛徒とされている自由惑星同盟に降伏したこと自体、下手すると処罰の対象らしい。
俺からすると、部下をそんな状況に追いやった上司の責任だと思うけど、自分の責任を部下に被せる上司というのは、どんな組織にもいるらしい。そんな彼らにとって、まだ10歳ながら商店で働く俺は帝国に置いてきた息子だったり、弟だったりを想起する存在のようだ。

学ぶだけなら帝国語は通信教育のカリキュラムで用意されている。ただ実践の場として帝国語を交わし、時に冗談なども教えてくれたのは彼らだ。同盟軍内部では、捕虜の扱いは自軍の二等兵よりはマシなんて言われたりするらしい。

本来予定されていた大規模な緑化事業が中止された惑星エコニアには、目立った産業がない。捕虜とはいえ、作業の対価として多少の金銭を支給されている彼らは、大事なお客様でもある。軍という巨大組織のスタート地点である二等兵より、確かに扱いは良いのかもしれなかった。

「カーク。お疲れ様。受け取り伝票だ。ちゃんと確認するように。それにしても、お前、帝国語が上達したなあ」

そんなことを考えながら、捕虜のおっちゃん達と話していると、収容所内の売店を任されているトーマスが中身の入った瓶と一緒に伝票を差し出してきた。

「働き出してから、同盟語より帝国語の方が話す時間が長いからね。頂きます!」

照れ隠し半分で伝票を受け取りつつ、差し入れのミルクでのどを潤す。俺より4歳年上のトーマスは、商店勤めを始めて以来
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