第六十五話
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……。
「しかし、少し気になりますな」
立花さんがお市を見ながら不意にそう切り出してきた。
「ええ、きになりますね」
軍神も同じように相づちを打つ。
「え、何が気になるって言うんだい?」
「行方不明者が続発したという一連の事件……織田の残党だけで動くにはあまりに広範囲に動きすぎているとは思いませんか。
九州でもそのような事件が発生し、調査に乗り出した覚えがございます」
よく分かっていない慶次に説明する立花さんの言葉に、私も眉を顰めた。
西国とは聞いてたけど、確かに関東から九州までは広すぎる。織田の残党だってそこまで回れるほどに数がいるとは到底思えない。
「え、それってつまり?」
まだ分からんのか、慶次。お前もそこの同じように分かってないモブと同程度の頭ってことか?
「つまり支援者がいる、ってことよ。
織田信長の復活を望んでいる人間が少なからずいて、織田の魔王復活に手を貸している可能性が限りなく高いわけ」
そこまで言ってようやく驚いた慶次に、ついついこめかみを押さえて溜息を吐いてしまった。
「謙信様」
私達の目の前に現れたのは美しきつるぎことかすが。
私達を見て、一瞬にして慶次の着物を一枚剥いで自分の身体に掛ける技は凄いけど……ちょっと待ってよ。
変態を見るような目で私達を見ないで。
「……どうしたの、かすがちゃん」
訝しがる慶次にかすがは当然説明をしない。そこで代わってこっちが
「……あー、ちょっと前にうちの小隊でかすがの身体を視姦しただけ」
と、説明してやるとかすがが真っ赤な顔をしているのが可愛かった。
本当、皆で嘗め回すようにしてかすがの身体見たもんねぇ……。
「しっ……視姦!?」
「うっ、煩い慶次!! そんな大声で言うな!!」
涙目になってそんなことを言うかすがの隣で、軍神が目を細めてこっちを見ている。
何か怒ってるようだったけど、お互い様ですよ。
こっちは殺されかけたんだもん、美しきつるぎが無事だったんだから良かったと思ってよ。
っていうかさ、あの状況で無傷で撤退させるって言ったらそれしかないでしょうよ。
私だって好きでやったわけじゃないもん。……半分嘘だけど。
「そ、それよりも、織田ですが……やはり謙信様の見立てた通り、裏で支援を行っている者がおりました」
「それはなにものですか」
「それが、身元が分からぬようにと裏から手を回していて、いま少し洗い出しに時間が掛かってしまいます」
かすがの報告に軍神が何事かを考えている様子だった。
つ、と席を立ち、文机に向かって優雅に文をしたためている。そしてそれを畳んで慶次に差し出した。
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