第六十五話
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浮かんだ闇の濃さに怯みそうにはなったけど、ぐっと堪えてしばらくお市を見ていた。
「うん……市も一緒に行く……」
子供のように笑ったお市の頭を撫でて、私は立ち上がった。
手を差し伸べて立ち上がるのを手伝ってあげると、お市は嬉しそうに私の手を握ってくる。
……可哀想に。
やって来たことは許せることではないけど、哀れに思えてならない。
同情出来るほど罪は浅くないけれど、きっと自分の意思でなくて言われたままに動いてきたような気がする。
狂ってしまった人間に、物事を冷静に判断させるなんて出来っこない。それが分かっていたから連中も利用してたんだろうし。
「とりあえず、一旦軍神のところへ行こう。報告もしたいし、どうも私達だけじゃ手に余りそうだからその辺も話し合わないと」
「そうですな。お市殿のことも話した方が良いかと思います」
というわけで、私達は軍神の下へと戻ることになった。
私達が戻って来た頃にはすっかり花火大会も終わっていて、丁度軍神が宿へと引き上げて来た辺りだった。
しっかり花火見物を楽しんでやがったな? と言いたいところだったけどそこは黙っておくことにした。
事態の報告を済ませて、どうにも我々だけでは手に余りそうだという話をして、尚且つお市を奥州に連れて戻ることを話せば、
軍神は厳しい表情のまま、織田の動きを考えればお市の身柄は何処かで保護をした方が良いと述べていた。
ちなみに様子を見に行った小隊は一人残らず行方が分からなくなっており、残った五人の話では、黒い手が現れて彼らを飲み込んでいったという。
こいつらはどうにか逃げられて黒い手の餌食になることは無かったらしいんだけど、織田の兵に見つかって囚われてしまったのだとか。
「ねぇ、お市。あの黒い手は貴女が操ってたのよね?」
「そう……みんなが村人達を飲み込めって言うから、言われた通りに村人達を飲み込んだの……」
やっぱり一連の犯人はお市か。で、そんなお市を操ってたのが織田の連中だと。
「その黒い手で飲み込んだ村人達は、今何処にいるんだい?」
慶次の問いかけに、お市が微笑を浮かべる。
「兄様の贄になったのよ……? たくさんの命があれば、兄様が地獄の底から戻ってくるって……」
……もしかしたら、とは思ってたけど、攫われた人間の命はもう無いものと考えて良さそうだ。
お市の言葉に皆の眉間に皺が寄る。
「お市、約束して。もう人を飲み込んだりしないって。約束してもらえないと一緒には連れていけない」
「うん、約束する……市、いい子にしてるから……」
思ったとおり物事を判断することさえまともに出来ないようだわね……これじゃ、簡単に人の言いなりになっちゃうか
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