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竜のもうひとつの瞳
第六十四話
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るけど変化はなし。
じゃあ素手で掴めば引き離せるかと頑張ってみるけれども、一応触れるものの力が強くてびくともしない。

 どうしよう、なんて思っていた矢先に足元に黒い沼のようなものが出来て、ゆっくりと私を沈めようとする。
婆娑羅の力でどうにもならない以上私に抵抗する術は無く、必死にもがいて逃げようとするけど意味はない。
そうこうする内に腰くらいまで地面に沈んでしまって、本格的にこれはヤバいと焦り始めた。
黒い手が次々と出てきて、私を沈めようと身体を押さえつけてくるし、思うように身動きも取れない。

 これ、もし頭まで沈んじゃったらどうなるの? 死ぬ? それとも比喩じゃなくて文字通り生きたまま食われる?
こんなことを考えた瞬間、恐怖に襲われてパニックになってしまった。

 「嫌っ!! や、やだ!!」

 生まれ変わる前はミンチで死んで、今度は訳の分からないものに連れ攫われて死ぬの? 冗談じゃない。

 だけどあの役立たずの五人組にどうこう出来るはずもなく、敵に阻まれて近づくことさえままならない。
立花さんもこちらに気付いたけれど、敵が予想以上に鬱陶しくてなかなか助けに来てはもらえない。

 段々と身体は沈み込んで、ついに私の身体は胸の辺りまで沈んでしまった。
私が逃げられないようにと絡み付いてくる手が、私の頭を掴んで押し込めようとしてくる。
首を振って払おうとするものの、黒い手の方が力が強くて意味が無い。

 やだ、死にたくない……、こんなところで怖い思いして、たった独りで死にたくなんかない!

 「いやああああ!! 助けて! 小十郎!!」

 そう叫んだ瞬間、青い光が私から放射線状に発せられて、私を押さえつけていた黒い手が全て弾け飛んだ。
ついでに近くにいた織田の兵にも青い光が当たり、その場に倒れていく。
敵が揃って怯んで動きを止め、立花さんがその隙を狙って私を黒い沼から引き摺り上げていた。

 「片倉殿! 力を納めて下さい! 味方まで巻き込んでしまいます!」

 蒼い光が竜のように私の周りに纏わりつき、近づこうとする人間を貫いている。
お供達はこれを見て揃って震え上がっているし、無敵なんか一番離れて腰を抜かしてる。
一生懸命立花さんが力を調整しようとしてるけど、それも上手くはいっていない。

 「ち、力ったって……ど、どうしたら」

 「ゆっくりと大きく息を吸って、吐いて……心を静かに落ち着けて下さい。
もう大丈夫です、危機からは脱しております……何が起ころうとも、手前が片倉殿をお守り致します」

 立花さんの言うとおりに深呼吸を繰り返し、何があっても守るというその言葉に安心した途端、
私に纏わりついていた青い光が消えていった。

 「な、何……今の……」

 「雷
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