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竜のもうひとつの瞳
第六十二話
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事実か否かも定かではありませんが……
事実ならば尚更各地で起こっている神隠しは防がなければなりません。
本拠地を本能寺に据えているそうなので、手がかりを求めて調査に訪れたのですが……越後ではどうでしょうか」

 「……えちごのちでも、どうようにむらぜんたいからむらびとがきえる、といったじけんがおこっています。
かすがにもちょうさをたのみましたが、いぜんとしていばしょもげんいんもはんめいしないままです。
……だいろくてんまおうのふっかつ、それがむらびとをさらうもくてきであるのならば、ぜがひでもとめねばなりません」

 やっぱり越後も例外じゃないってことか。
しかし、どうして皆こうも第六天魔王って話になると神妙な顔つきになるのかねぇ。
そりゃ、その異名は伊達じゃないんだとは思うけど……どうにも私には分からない。

 「慶次、第六天魔王ってのはそんなに恐ろしいものなの?」

 私の問いに、軍神も慶次も、そしてお供までもが驚いた顔をしていた。
逆にその顔にこっちが驚いてしまったくらい。

 ……何か、私変なこと言った?

 「……かのものは、ひとにあらず……ねのくによりいでし、まことのやみ。
まおうがてんかをしょうあくしていれば、いまごろこのよはまかいとかしていたでしょう」

 魔界? それって随分大げさな……いや、軍神がこれだけの評価をする相手だ。
生半可な相手じゃないってのは分かった。やっぱり一筋縄ではいかない相手と見て間違いなさそうだ。

 「俺も大抵人に悪い感情持ったりしないんだけどもさ……あの人だけは恐ろしかったよ。
この世のありとあらゆる災いを集めて作った人間、って感じでさ。
あの人が天下を獲ろうとしていたのは、この世を魔界に堕とす為だって言うから、俺達は織田包囲網を組んで戦ったんだよ」

 織田包囲網……そういや、同盟組んで囲み討ちをしたって竹中さんが言ってたっけ。
確か、何か意味深なこと言ってたような覚えが微かにあるけど……何だったっけ、忘れちゃったな。

 「けいじ、りゅうのみぎめにきょうりょくをし、おだのどうこうをさぐりなさい。
まんがいち、まおうふっかつをもくろむのならば」

 「分かってるよ。叩き潰せって言うんだろ?」

 ぱん、と膝を叩いて慶次が立ち上がり、軍神に向かってにやりと笑って見せた。
事情を話して良かったよ。協力してくれるようで何より。人手はあるに越したことはないしねぇ〜。

 「それと、もうひとりどうこうをさせてもらいたいものがおります」

 軍神の言葉に私達は揃って首を捻る。軍神がわざわざ同行させたいと言う相手は一体誰なのか。

 「もう一人? 誰だい、その人は」

 軍神が軽く手を叩くと、部屋の奥の戸を上杉の家臣達が静かに開く。

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