ちいさなしまのおはなし
不死鳥は天(そら)に煌めいて
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いうのに、それでもピヨモンは空の名前を呼ぶことを止めなかったのは、すごいとしか言いようがなかった。
──こんな甘ったれのデジモンと上手くやっていけるのかしら?
こっそり吐かれた空の溜息は、幸か不幸か誰にも聞かれることはなかった。
砂漠、だった。
宛てもなく彷徨っていた子ども達は、突如として亜熱帯の樹林が終わりを告げたのを見た。
樹林が切り取られた先に広がっていたのは、一直線を描いた地平線を境に、天色の空と綿雲、黄土色の砂漠が果てしなく広がっていた。
前に進むしか選択肢が残されていない子ども達は、砂漠のエリアに足を踏み入れる。
治と丈が嫌な顔をしたけれど、他に道が見当たらないのだから仕方がない。
太陽の光は容赦なく降り注ぎ、子供達から余裕を奪っていく。
遮るものが何もない砂漠地帯は、砂が太陽を反射して視界を歪めるほどの熱さに達していた。
上と下から容赦なく熱さが子ども達に襲い掛かってきて、必然的に上がっていく体温を下げようと防衛反応が働く。
次から次へと流れる汗を袖で拭えば、水分を吸った個所だけ色が濃くなった。
「……ここって、テレビで見たアフリカのサバンナってところに似てるなぁ」
背負ったパソコンが熱と砂にやられないかと冷や冷やしながら、光子郎は辺りを見渡して呟いた。
精密機器は水や熱、そして細かい埃などに弱いから、本当はこんな砂漠歩き回りたくないのだが、根っからのスポーツ少年の太一に訴えたところで、理解してくれるかどうかすら怪しい。
「それならどんなに良かったことか……」
「だよなぁ、ライオンとかキリンが飛び出してくりゃ、まだマシだったぜ」
治の推理によって、ここは異世界であるということが前提でインプットされている子ども達の脳内は、暑い中でも冷静であった。
丈は至極残念そうに呟いていたし、太一は周りの景色を見ながら軽い絶望のようなものを抱いている。
ここにはデジモンしかいない、とデジモン達はずっと言い張っているから、太一の言う通り今更ライオンやキリンが出てくるわけがないのだ。
実際ライオンなんか出て来たら無事では済まないが、それでも自分達が本来いるべき場所であるということが認識できさえすれば、この際肉食動物が出てきてくれても構わなかった。
だがここが子ども達の本来の世界ではない、と嫌でも認識させるのは、デジモン達の存在だけではない。
「そもそも砂漠に電柱が建っていること自体、ツッコミどころだよ。現実の世界でこんなんだったら、アフリカはもっと発展しているだろうに……」
この中では博識な治が、彼方此方無造作に建てられている電柱を見ながらそう言った。
アフリカは正確には沢山の国で成り立った大陸のことであり、その発展具合も国によって全く異なっ
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