ちいさなしまのおはなし
不死鳥は天(そら)に煌めいて
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んだよ、ってお姉ちゃんに教えてもらったのを思い出した大輔は、雨降らないといいなぁ、と思いながら先を歩く先輩達の後をついていった。
微かに吹く風すら照り付ける太陽のせいで生ぬるく、次から次へと玉のような汗が流れ出て水分が奪われていく。
どっしりと構えている大きな太い幹に、何故かこれでもかと貼りつけられた道路標識は、日本にあるものもあればアメリカで見かけたことがあるものもあった。
車も通れないどころか、舗装すらされていない悪路なのに、一体どうしてこんなところに標識があるのか、という疑問すら、今の子ども達は抱くことはない。
先に進むにつれ、上昇していく気温に、長袖シャツを中に着ている治は、一言断りを入れると茂みに隠れた。
しばらくごそごそしたかと思うと、お待たせって言って戻ってきた治は、下の長袖を脱いで腰に巻いていた。
「長袖着てくるんじゃなかったなぁ……」
「そもそも何で着てきたんだよ、夏だぞ今?」
「キャンプ場は比較的涼しいって、天気予報で言ってたからさ……」
先を行く。鬱蒼と覆い茂った森の樹々が作った陰のお陰で、熱いのは軽減されているが、暑いのはどうしようもなかった。
楕円にぽっかりと開けた場所に出る。陰から出たことで薄暗かった視界が、一瞬だけ白く染まった。
眩しさに目を細めながらも、先頭を歩いている太一が黙々と進んでいくから、他の子ども達も置いて行かれないように必死についていく。
「……あら?」
地面から飛び出した根っこを跨いだ空の耳が、何かを捉えてふと天を仰ぐ。
傍らにいたピヨモンが、つられて上を見た。
空気を擦るような音が徐々に近づいてきて、他の子ども達も何事かと足を止めた。
「何の音だ……?」
太一がそう呟いた直後、覆い茂る樹々の隙間から見えたのは、高速で横切った黒い何か。
「……歯車みたいだったな」
ほんの一瞬しか見えなかったはずなのに、治はあれを歯車と認識できたらしい。
浜辺に建てられた電話ボックスと言い、周りにレールのない路面電車と言い、車も通れない悪路の樹々に貼りつけられた道路標識と言い、異世界であってもあり得ない光景を絶えず目にしてきた子ども達は、もう何が来ても驚かない。
「空飛ぶ円盤じゃないの?」
「歯車型の隕石だったりして」
「……何にしても、いい感じのするもんじゃないな」
それでも、子ども達の不安を呷るには十分だった。
ここでは自分達の常識は通用しない。だから歯車が空を飛んだとしても、この世界ではきっと何らおかしなことではないのだろうが……頼れるものが何もないという状況であることに代わりはなかった。
「……うわっ!賢?どうした?」
どんよりとした空気に包まれかけた子ども達を引き戻したのは、治の悲鳴だった。
他の子ども達よりちょっとだ
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