暁 〜小説投稿サイト〜
ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
月夜に奔る蒼狼
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いなかった。
太一が真剣な話をしようとしていた大輔とブイモンの下へ向かう際に、大きな大きな赤い葉っぱを踏みつけて行ったことも。
見張りを再開しようとした太一が薪をいじくって、弾けた熱い木片がその葉っぱの上に転がっていったことも。

そしてそれが……葉っぱなんかではなかったということも。

ごごごごご、という地響きとともに、島の石に埋まっていた葉っぱが蠢いて、湖の底から渦が顔を出した。その渦が立ち上がり、水飛沫を上げながら真っ二つに割れ、霧散する。
中から現れたのは、長い身体が特徴的な、まるで蛇のような怪物だった。

《ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!》

咆哮。長い身体をくねらせながら、怪物は唖然としている子ども達を見下ろす。

『シ、シードラモンやないか!?』
「シードラモン!?あれもデジモンなんですか!?」

テントモンの慌てふためく声に、光子郎が問いかけたがテントモンが答える前にシードラモンが動く。
子ども達を睨み付けていたシードラモンは、くるりと背を向けると泳ぎ出した。
同時に、陸地と島を結んでいた石畳がガラガラと音をたてて崩れ、島が動き出したのである。
まるでシードラモンが島を引っ張っているようだった。
光子郎がそう言うと、そんな莫迦なとテントモンが返す。

『シードラモンは大人しいデジモンでっせ!?殺気を感じん限り襲ってくるなんて、ありえへん!!』
「んなこと言ったって…!!」

太一が踏んづけて、始めた木片の熱さによって怒り狂っていることなど、太一達は知る由もない。
やがてシードラモンの泳ぐスピードが緩まると、小島もゆっくりと停止する。
湖のほぼ真ん中まで連れて来られてたことにより、子ども達の逃げ道は絶たれてしまった。
島に埋め込まれていたシードラモンの尻尾が、持ち上がるように掘り出され、ばしんと小島を叩く。
島が大きく傾くほどの揺れに、子ども達とデジモン達は溜まらずひっくり返った。
渦を産み出しながら、シードラモンが再び湖の中へと潜って行く。
湖面から見える陰は、猛スピードで島の真下へ移動すると硬い頭で島を突きあげるようにぶつけた。
その衝撃でまた島が動く。
彼方此方へ動き、激しく揺れる小島はまるで荒波にもまれる漁船のようで、船酔いを起こしたミミの顔は真っ青に染まっていた。

がしゃーん、と湖の中に建っている電柱にぶつかり、小島は動きを止める。
やっと止まった、と安堵した太一だったが、いよいよ逃げ道がなくなってしまったことに代わりはない。
再び水飛沫をあげ、水柱の中からシードラモンが顔を出した。

『行くよ、みんな!』

アグモンの声を合図に、デジモン達は動き出す。

『マジカルファイヤー!』
『エアーショット!』

渦巻く緑の炎と空気の
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