暁 〜小説投稿サイト〜
ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
月夜に奔る蒼狼
[7/14]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ている。

『ヒカリィ』
『ケーン!』

気まずい空気が流れている子ども達の下に、ブイモンを伴ったプロットモンとパタモンがやってきた。
プロットモンとパタモンの間に挟まれているブイモンは、大輔と同じように項垂れていた。
違うところと言えば、大輔の表情は硬く、ブイモンは憔悴しきっている。

「………………」
『………………』

じ、とブイモンを見つめる大輔と違い、ブイモンは項垂れたままである。
他人に触れられることを怖がるというとても大事なことを、後回しにしていたことを後悔しているのだろうか。
でも言えるはずがなかった。大輔を護るのだと、ずっと待っていたのだと豪語していたのに、こんな致命的な弱点があったなんて。
嫌われたくなかった。失望されたくなかった。
そう思うと、大輔の顔をどうしても見れない。

『……あ、』
「もう、」
『え?』

沈黙が怖い。どうしよう、ブイモンの心にますます焦りが浮かぶ。
無意識に落とされた声を掻き消すように、大輔が口を開いた。

「もう、隠してること、ないよな?」
『………………』
「ないよな?」
『……な、い』
「じゃあいい」

ぶっきらぼうな口調で、大輔はそう言った。
え?ってブイモンはようやく顔を上げて、大輔を見やる。

『ダ、ダイスケ……?』
「謝るなよ」
『え?』
「俺は別に、ブイモンに怒ってるわけじゃないから。だから謝るなよ」

ぎゅ、とブイモンの手を握りしめ、大輔は言った。

「何かあったら、ちゃんと言ってくれよ。俺達、パートナーなんだろ?そう言ってくれたじゃんか」
『……う、ん』

再度項垂れるブイモンの視線の先には、大輔にぎゅっと握られている己の手である。
もう、震えは止まっていた。
他の誰かに触れられることを拒む己の身体は、大輔は勿論、助け起こしてくれたヒカリのことも、手伝おうと偶然触れた賢のことも、何故か拒否しなかった。
理由は分からない。
プロットモンとパタモンのパートナーだからだろうか?
幾ら考えても、答えは出なかった。
……でも、


《何かあったら、ちゃんと言ってくれよ》


きっともう、悪夢は見ない。











それは、突然のことであった。

島が、突如として揺れたのである。
ブイモンと会話する際は、振れないように注意を払おう、と要点を纏めた丈によってお開きになり、明日に備えて寝ようと、太一とアグモンを残して電車に戻ろうとしていた時だった。

「なっ、何だぁ!?」

金波の美しい湖面が、激しく波打っている。
経っていられないほどの強い揺れに、子ども達はなすすべもなかった。
何が起こっているのか、何があったのか、子ども達は話に夢中で気づいて
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ