ちいさなしまのおはなし
月夜に奔る蒼狼
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太一も大輔も分かっている。分かっていて態と踏み込んだりすることもある。
今回はたまたま、“踏み込んだ”のだ。
いつもなら頬っぺた同士をくっつきあってべたべたしたりしない。
せいぜい両手で頬っぺたを挟んで、むにむにしてやるだけだ。
ちょっとだけ、ふざけちゃったのだ。
いきなり知らない世界に飛ばされて、しょっぱなからクワガーモンに追っかけ回されて、海に行けばシェルモンと対峙して、それを退けたと思ったらモノクロモンの縄張り争いに巻き込まれかけて。
色々あった。子どものキャパシティーは、とっくに限界を迎えていた。
正直、ふざけないとやっていられない状況だったのだ。
寝る前に太一がガブモンにちょっかいかけたのも、そう言ったことが理由だった。
限界以上までふざけて、明日に備えたかったのだ。
散々じゃれ合った後に、何やってんだろうな、って2人で乾いた笑いを浮かべて遠くを見つめて、しばらくボーっとしたら、切り替えるつもりだったのだ。
彼らがいた世界でも、たまーに見られる光景だった。
太一と大輔にとっては、日常茶飯事、いつものことだった。
だから太一は、大輔のパートナーも同じように扱っただけだったのである。
自分達だけの儀式に、ふざけ合いに、じゃれ合いに、ブイモンも混ぜてあげたかっただけだったのである。
アグモンが来たら、アグモンも一緒にふざけようと思っていたのである。
その結果、アグモンがあわわって顔を真っ青にさせて、ブイモンががっちーんと硬直した数秒後に喉が裂けるほどの大きな悲鳴を上げることになるなんて、太一も大輔もきっと思っていなかった。
「……とりあえず、状況は理解できたよ」
どうしてブイモンが悲鳴を上げることになったのか、という経緯は理解した。
問題は、その理由である。
太一が触れてしまったことでブイモンは悲鳴を上げた。
ならば何故、ブイモンは太一に触れられて悲鳴を上げたのだろうか。
ちゃんと話してくれるとデジモン達は言ってくれたので、子ども達はデジモン達の方を向き、言葉を待った。
デジモン達は、互いの顔を見やり小さく頷き合うと、代表してピヨモンが口を開いた。
『えっとね、最初に言っておくと、ワタシ達も詳しいことは分かんないの。だから、何で?って聞かれても、それが何でなのか答えられないの。ごめんね?』
そう前置きしてから、ピヨモンは教えてくれた。
『ブイモンね、誰かに触られるの、すっごく嫌がるの。怖がるの。ワタシ達がソラ達と会う前、ソラ達のこと、みんなでずっとずっと待ってた時から』
「……私達が此処に来る前から?」
『うん』
ピヨモンは言う。子ども達を待っていた長い長い間、気が遠くなるような長い間、ピヨモン達はみんなで一緒に待っていた。
まだ小さく、頼りなく、相手を退ける力も持たない
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