ちいさなしまのおはなし
月夜に奔る蒼狼
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った。
あんな小さい魚の、どこにそんな力が、って光子郎が興味津々に覗き込んでいる。
岸にたどり着いた子ども達は、下級生を筆頭にどっと疲れが押し寄せ、その場に座り込む。
色々あった。ありすぎた。
路面電車のお陰で安心して眠れると思っていたのに、まさかシードラモンに襲われるなんて夢にも思わなかった。
ただでさえ、訳の分からないところに飛ばされて、子ども達のまだ成熟しきっていない小さな心にはストレスがかかっていたというのに、あんまりである。
「……どうして今度はガブモンが進化したんでしょうね?」
疲れた顔を見せながらも、誰もが疑問に思っていたことを、光子郎はぽつりと口にした。
傍で聞いていた太一と空だけが、光子郎に反応してくれた。
うーん、って考えて、ある1つの結論に至る。
ガブモンが進化した時の、状況と言えば。
「……もしかして、治くんがピンチだったから?」
あ、と太一と光子郎は言葉を落とす。
そう、ガブモンが進化した時、治は危うくシードラモンに殺されるところだったのだ。
太一の時も、シェルモンの頭部に生えていた触手に絡めとられ、太一も危うく死にかけるところだった。
ちらりとアグモンを見やる。
太一の隣で、アグモンはとっくに夢の中に旅立っていた。
もう食べられない〜と幸せそうに呟いていて、お約束だなぁって太一は苦笑する。
よく考えたら、交代制の見張りをする予定だった太一とアグモンは、一晩中起きている羽目になったのだ。
そう自覚した途端、強烈な眠気に襲われた。
「あー……難しいこと考えるのは起きてからにしようぜ……眠い……」
「……そうですね」
眠気に負けたミミが空に寄りかかってきた。
もうここで寝る、と、路面電車で寝る前はベッドで寝たかったと我儘を言っていたお嬢様が、逞しくなったものだ。
見渡せば、他の子ども達とデジモン達もぐっすりと深い眠りに陥っている。
昼行性のデジモンに襲われたらどうするのだ、という考えすら、今は至らないのだろう。
とにかく寝たい。眠りたい。寝させろください、頼むから。
空と光子郎も寝落ちしたのを見守って、太一もしょぼしょぼする目に従って目を閉じようとした。
親友がいないことに気づき、何処に行ったのだと反対側をみやると、少し離れたところで賢とパタモン、そしてガブモンが治に寄りかかって眠っていた。
賢とガブモンの肩に手を回し、引き寄せ、穏やかな表情で見下ろしている治は、ふと視線に気づき、顔を上げる。
太一だった。
賢に回していた方の手で、ピースサインを作り、普段は絶対に見せない悪戯っ子のような笑みを、太一に向ける。
にしし、と太一も笑い返して、親指を立てた。
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