ちいさなしまのおはなし
月夜に奔る蒼狼
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絵にかいたようなミミでさえも、最初はテントモンやパルモンとは距離を置いていた。
行動派の太一、面倒見のいい空も、自分の常識の範囲外であるということを、治に言われるまで認めようとはしなかった。
来年は中学生になる丈なんか、その最たるものだ。
治だけだったのだ、ガブモンを最初から笑って受け入れてくれていたのは。
初めましてをした時も、ツノモンからガブモンになったときも、昼間海に向かう道すがらの会話でも。
治は一度だって嫌悪や懐疑の眼差しを向けたことはなかった。
ガブモンをガブモンとして、そこに生きるものとして、受け入れていた。
──もう、あの優しい眼差しで見つめてもらえなくなるのか
嫌だと思った。それは、それだけは嫌だ。
何年も何年も、仲間達と身を寄せ合ってずっとずっと待っていたパートナー。
待ち望んでいた瞬間を迎えた時は、涙が出るぐらい嬉しかった。
嬉しくて嬉しくて涙を滲ませた時、泣かないでくれって慌てて抱き上げて、涙を拭ってくれたのだ。
よしよしって優しく頬を撫でてくれたのだ。
賢に対して同じことをしているのを見た時は、もっともっと嬉しかった。
治にとって自分は、賢と同じぐらい大切なものとして治の中にあるのだと、感じられたから。
受け入れてくれただけでなく、自分を賢と同率の位置に置かせてくれたのだ。
……それを、みすみす失ってなるものか。
『オサムゥウウウウウウ!!!』
ガブモンの叫び。
そして、光が治から発せられる。
正確には、治の腰から。
ガブモンの身体から、眩い光が溢れた。
『ガブモン、進化ぁー!!』
くるくるとその場で回転したガブモンの身体が、大きく変化した。
アグモンがグレイモンに進化した時と、全く同じ光景だった。
『ガルルモン!!』
光が収まる。
二足歩行の恐竜は、被っていた青い毛皮が恐竜を包み、大きくなった狼のような姿をしていた。
唖然とする子ども達を尻目に狼……ガルルモンは大きな身体を支える太い四肢で大地を駆ける。
大地を蹴り、宙を跳ぶ。その跳躍力や凄まじいもので、一気にシードラモンと距離を縮め、治を捉えていた尻尾を掠めた。
解放された治は湖に飛び込み、残された体力と気力を何とか振り絞って、子ども達がいる島まで泳ぐ。
太一と丈が島のほとりで待機して、治を引っ張り上げた。
縛られていたことで詰まっていた息を何度も吐き出して、治は呼吸を整える。
わあ、って賢がはしゃぐ声がした。
「頑張れー!ガルルモン!」
「You can do it!」
「シードラモンなんかに負けないで!」
2年生達が、パートナーと一緒に声を張り上げていた。
視線の先を辿ると、そこには蒼い狼へと進化した己のパートナーが、シードラモンに噛みついている姿が
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