ちいさなしまのおはなし
月夜に奔る蒼狼
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困ったような声。
とりあえず無事らしい、ということに安堵した治とガブモンは、遅れて来た他の子ども達とデジモン達と一緒に声がした方向に向かった。
そして子ども達は、思っても見なかった光景を目の当たりにする。
「……大輔くん?」
『ブイモン……?』
ヒカリとプロットモンがポツリと漏らした。
そこにいたのは、太一とアグモン、それから大輔とブイモンだった。
何処にもいないと思ったら、外にいたらしい。
しかし子ども達は、心配かけて何をしていたのだと、語り掛けることは出来なかった。
「お、おい、ブイモン?どうしたんだよ?」
「なあ、ブイモン。答えてくれよ、なあ、なあってば!」
太一と大輔が懸命にブイモンに声をかけている。
そのブイモンは……身体をぎゅうううううっと縮こまらせて、自らの腕を回して抱きしめて、見るからに震えていた。
人間のような5本指に生えた鋭い爪が腕に食い込んでおり、このままではいずれ皮膚を食い破ってしまう。
何があったのかは知らないが、とりあえず止めさせようと丈が動いたのだが……。
『っ、ジョウ!待って!』
ブイモンの様子を訝しんでいたデジモン達だったが、やがて何かに気づいたようで目を見開かせ、さっと顔を青くした。
ブイモンに近付こうとした丈を、ゴマモンが引き留める。
いきなり大きな声を出したもんだから、丈も反射的に立ち止まった。
「どっ、どうしたんだよ、ゴマモン?」
『ブッ、ブイモン!』
『大丈夫!?』
ゴマモンは答えず、動いたのはパタモンとプロットモンだった。
ヒカリと賢がそれぞれ抱えていたのだが、2匹は2人の腕から飛び出して行って、蹲っているブイモンの下へと一目散に駆け寄って行ったのである。
ガチガチに震えて、身体を丸めるように縮こまっているブイモンの両側に立って、ゆっくりと擦ってやれば、少しずつだが震えが収まっていくのが分かった。
『……アグモン?』
ほ、とデジモン達が胸を撫で下ろしたのもつかの間、パルモンが何やら怒っているかのような雰囲気を醸し出してアグモンを見つめた。
と言うより睨んだ。
『あー……ごめん。ボクが止める間もなく……』
『もー!何してんのよ!パートナーでしょ!?』
「ちょ、ちょっとピヨモン?」
気まずそうに頭をかいているアグモンを、ピヨモンが叱りつける。
デジモン達の間だけで繰り広げられている会話に、空が耐え切れずにピヨモンに問いかけた。
一体、何が起こっているのか。何故ブイモンは蹲って震えていたのか、どうして太一と大輔は訳が分かりませんっていう顔をしているのか。
デジモン達は知っているようでも、子ども達は知らない。
ここに来てまだ1日も経っていないのである。
どういうことかちゃんと教えて、って空が困ったよ
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