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戦国異伝供書
第九十六話 尼子家の騒動その十二

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「それで頷けばな」
「それで、ですな」
「当家の家臣にしていき」
「それでよしとしますな」
「それを第一とする」
 戦でなくというのだ。
「それはよいな」
「わかり申した」
「それではそれぞれの国人達の家に人をやりましょう」
「そしてそのうえで人を送り」
「組み入れましょう」 
 毛利家にとだ、こう話してだった。
 元就は実際に吉川家や小早川家と近い石見や備後の国人達に人をやりまずは毛利家に入る様に言っていった。
 そしてそれでも頷かない家はその家にいる毛利家に反する者に賄賂を贈って篭絡したり暗殺したりしてだった。
 毛利家につこうという様な者を持ち上げてそうしてだった。
 毛利家につく様にしていった、それでもという家には兵を送り勢力を拡大していった。するとだった。
 安芸一国よりも遥かに大きな勢力となった、だが。
 ここで元就は家臣達の中でも特に信じられる者達だけを集めてそのうえで話した。その話すことはというと。
「さて、当家は大きくなったが」
「それでもですな」
「当家の悩みの種がある」
「左様ですな」
「井上家じゃ」
 この家のことを言うのだった。
「あの家は近頃前にも増して大きくなっておる」
「そしてですな」
「専横が目立っておりますな」
「家中で勝手な振る舞いが目立っております」
「そうなっていますな」
「だからな」
 それでというのだ。
「この度はな」
「あの家をですか」
「どうするか」
「それをお考えですか」
「滅しようと思う」
 まさにというのだ。
「そう考えておる」
「ですか、では」
「井上家にですか」
「これより兵を送り」
「そうしてですか」
「滅ぼす、そしてお主達にもな」 
 主な家臣達にもというのだ。
「動いてもらうぞ」
「はい、それではです」
「我等も殿と共に出陣します」
「井上家を滅しに」
「その様にします」
「頼むぞ、しかしな」
 ここでこうも言う元就だった。
「出来ればな」
「はい、殿としてはですな」
「家臣の家を滅ぼすことは」
「それはですな」
「左様、出来ればしたくはない」
 こうも言うのだった。
「内輪揉めは、ですな」
「やはり避けるべきですな」
「家はまとまっておるべき」
「そうであるべきですな」
「そうじゃ、だがこの度はやる」
 必ずと言うのだった。
「よいな」
「殿がそのお覚悟なら」
「我等もです」
「殿と共に」
「頼むぞ」
 こう言ってそうしてだった。
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