第九十六話 尼子家の騒動その十
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「だからな」
「尼子家が動けなくなり」
「大内家も動かぬ今のうちにですな」
「石見と備後にも領地を拡げ」
「村上家の水軍もですか」
「手に入れる、そしてな」
そのうえでというのだ。
「今よりも力を大きくするぞ」
「わかり申した」
「それではです」
「今のうちに国を拡げましょう」
「そうていきましょう」
「それと尼子家だけでなく大内家もじゃ」
どちらの家もというのだ。
「よく見ておく」
「そして、ですな」
「どうした状況か見て」
「動きもですな」
「そして我等も対する」
毛利家の方もというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「それではです」
「その様にしていきましょう」
「双方に忍の者を送り」
「そうして」
「是非な、では尼子家はこれで暫くは動けなくなったからな」
そうなったからというのだ。
「我等は石見と備後にな」
「はい、勢力を拡大していきましょう」
「この度は」
「そうしていきましょうぞ」
「是非な、それとわしが思うにな」
元就の目がここで光った、そうして言うことはというと。
「石見には銀山があるな」
「あの銀山をですか」
「当家のものとする」
「そうもお考えですか」
「うむ、そしてな」
そのうえでというのだ。
「あの富を我等のものとしたい」
「若しあの銀山を我等のものとしますと」
「無限の富が得られますな」
「そうなるからこそ」
「銀山もまた」
「手に入れたい、だが先走ることはせぬ」
これは強く戒めていた、自分自身に。
「決してな」
「若し先走るとですな」
「焦ってそうなってですな」
「ことを仕損じる」
「だからですな」
「それは何があってもせぬ」
己に戒めてというのだ。
「お主達もそれはせぬ様にな」
「はい、迂闊な動きが家を危うくする」
「そうなりますので」
「だからですな」
「我等もですな」
「そこは頼む、そして石見にも手を伸ばすが」
このことは決めているがというのだ。
「それよりもな」
「備後ですか」
「あの国ですか」
「あの国に優先して進出する」
「その様にしますか」
「石見の銀山は確かに欲しいが備後を手に入れるとな」
さらにというのだ。
「そこから備中、美作、備前と進めるな」
「はい、確かに」
「どの国にも尼子家の手が及んでいますが」
「尼子家は出雲それに伯耆を足場としてです」
「そこから播磨にも進んでいますが」
「尼子家が動けなくなったならな」
それならというのだ。
「備後からじゃ」
「さらに進める」
「それ故にですな」
「まずは備後ですな」
「あの国ですな」
「そうしていく、今のうちに我等は大内、尼子と並ぶ家になる」
元就は今の毛利家の目的も話した
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