第五十八話
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館へ向けて馬を走らせる。
佐助も手早く兵達に指示を出して私達の後を追って走ってくる。てか、馬と並走出来るって凄いね。
って、そこは今突っ込むべきところじゃないか……いや、もう今更か。
「くそっ……俺が離れるべきじゃなかったか!」
確かにこうなることが分かっていれば佐助は残るべきだったと思う。
だって、今の幸村君じゃ……
「あの調子だと、普段の半分も力出ないでしょ。とにかく急いで戻らないと」
頷く佐助は私をちらりと見て
「小夜さん、アンタが来る必要はないんだぜ?」
ってなことを言ってくる。まぁ、今はお互いに大人しいとはいえ敵国同士ですもんね。そう言いたくなるのは分かりますよ。
だけど、そう言われたからって引くわけにはいかないのよねー。
「冗談、こんなタイムリーなネタを逃すわけにいかないでしょ。
仮説が合っているかどうかの証明にもなるし、何よりその黒い手とやらを見てみたいしね」
そんなことを言って駆ける私達の後をお供の四人と甲斐の兵達が必死に追ってくる。
段々と私達から引き離されていく甲斐の兵達とは違い、必死に走ってくる四人は流石伊達の兵といったところか。
足軽だって馬に乗せちゃううちの軍の馬術を馬鹿にすんなよぉ?
さて、幸村君は無事かねぇ……話の流れ的にここで死ぬと洒落になんないからなぁ。
絶対後継者問題で甲斐が大荒れになること間違いなしだよ。
館が近づいたところで見えてきた、地面から生えるどす黒い無数の手に、馬が怯えて暴走しかかった。
慌ててそれを宥めて止め、後退して様子を見る。
うーむ、意外にグロい……。
さてどうしたものか、そんな風に考えたところで、ズン、という重たい音が当たりに響き、軽く地面が揺れた。
地震かと思ったけれど、視界に入ったものをきちんと確認して、すぐにそれが地震ではないことに気が付いた。
館から巨大な黒い手が二本生えている。それが、勢いよく館を叩き潰したわけだ。
「大将!!」
黒い手を避けて、佐助が飛び出していく。黒い手に捕らわれないように枝を伝って駆ける様は、名前の通り猿を思わせる。
そんなことを感心していても仕方が無いので、私達も迂回路を探して佐助の後を追い、館へと急いだ。
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