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竜のもうひとつの瞳
第五十八話
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なったから様子を見に来たのよ」

 「どうであれ第六天魔王が復活しようとしているのならば、手を打たぬわけには参らぬか」

 そう言って佐助に忍隊に調査をさせるようにと指示を出す。また同様の事態が起こっても困ると言っていた。

 出来ればここは情報交換をと言いたいところなんだけども……そういうわけにもいかないか。こっちに構ってる余裕がなさそうだもん。

 と、廊下を慌しく走る音が聞こえて、私達は一斉に戸へと視線を移す。荒々しく戸が開いて飛び込んで来たのは甲斐の兵だった。

 「申し訳ございません! 幸村様に急ぎ報告致します!! 見回りの兵より近隣の村にて村人が消えたとの事!
偶然にも村の子供が一人だけ残っておりまして、ただ今事情を聞いておるところです!!」

 「なっ……」

 これが二例目、ってことか。まさかここで遭遇するとは思わなかったよ。つか、何たる偶然。
こんなに都合良く話が進むと、狙ってんじゃないのかって思っちゃうよ。

 「急ぎ参」

 「ちょっと待った! 大将はここで待機してなきゃ。代わりに俺が行って来るからさ」

 「う、うむ……」

 ……政宗様なら絶対に自分が行くって言って飛び出してっちゃうなぁ……。
いや、この状況でそれ伝えたら政宗様に倣って出て行っちゃうか。
佐助に睨まれるのも面白くないし、とりあえず今私達がすることは。

 「佐助、私達もそれついて行ってもいい? 何か手がかりが得られるかもしれない」

 「まぁ……別にいいか。それじゃ、着いて来て」

 佐助に案内されるままに部屋を出て、何となく調子の出ない幸村君を残して私達は躑躅ヶ崎館を後にした。



 甲斐の兵と共にやってきた、村人がいなくなったという近隣の村。
長閑な農村というよりも、ここは宿場町に近いようなスタンスで成り立っているのは宿の多さを見ても予測がつく。
一応調査をしてみたけれど、金品や刀なんかもそっくり残っていて、ある家ではこれからご飯にするつもりだったのか、
食事の支度が整ったままになっていたらしい。

 生活空間から人間だけを切り取ったようなこの状況に、誰もが眉を顰めている。
保護した、という子供に話を聞いてみると、怯えた表情で黒い手が地面から出てきて皆を引き摺り込んでいったと話してくれた。

 「……黒い手?」

 「う、うん……いきなり地面が黒くなって、黒い手がたくさん出てきて……沼に沈めるみたいに皆を引き摺り込んだんだ。
怖くなって逃げたんだけど、戻って来たら皆いなくなってて……」

 これが現代とかならショックで記憶がおかしくなったとか何とかで信じられないわけだけど……
何せここはBASARAの世界、こういうおかしな現象だってありえないとは限らない。

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