第85話『恋バナ』
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があるからだ。
「あちゃ〜、そりゃ高望みだろ」
「うっせ、わかってるよそんなことは。でも可能性がない訳じゃないだろ」
「いや〜どうだろうな〜」
その名前を聞いて、もう1人の男子はやれやれと首を振っている。だが確かにまだ諦めるには早いだろう。
「戸部さんなら友達だけど」
「…マジで? 何で? 学級委員繋がり的な?」
「いや、普通に」
「なんだよ、三浦ってコミュ障かと思ってたけど、結構プレイボーイじゃんかよ!」
「えぇ…」
コミュ障という評価は間違ってはいないが、プレイボーイという評価はやめて欲しい。そんな大層な者じゃない。そういうのは大地みたいなタイプのことを言うんじゃないのか。
「そりゃ三浦には彼女がいるしな」
「全くだぜ。羨ましい奴め」
「え、彼女なんていないけど…」
「は!? だったらお前、結月ちゃんは何なんだよ! もう嫁ってか!? 彼女通り越してるってか!?」
「ちょ、ちょっと落ち着いて!」
事実を言ったら、なぜか怒られてしまった。確かに結月とは同じ屋根の下で共に暮らしているとはいえ、さすがに嫁でもないし、そもそも彼女でもない。友達以上家族未満の存在である。
「これが落ち着いていられるか!」
「なぁ、夜なんだからもう少し静かにしてくれよ…。それと、冗談に聞こえるがコイツの言ってることは本当だぞ」
「なん…だと…!?」
つい声を荒げた男子に、伸太郎が眠そうにしながら言った。すると彼は、信じられないといった表情で晴登を見つめる。その視線はまるで、何かを訴えかけているようだった。
「はぁ……あのな、三浦」
「な、何?」
「お前バカだろ」
「え!?」
唐突なバカ呼ばわりに、晴登もつい声を上げてしまう。だが彼は冷静に、かつ呆れたように言葉を続ける。
「結月ちゃんはどこから誰がどう見ても、お前に惚れてんの。それくらい気づいてるよな?」
「う……ま、まぁ」
「だったらさ、何で受け入れてやんねぇの? 事情があるのか知らないけど、あんな可愛い子を断る理由はないだろ? このままじゃ彼女が報われなくて可哀想だぜ」
「……っ」
彼の言う通りだ。結月の好意は嬉しいし、断る理由なんてあるはずない。それでも受け入れないのは、晴登には自信が無いからだ。
本音を言えば、結月とそういう関係になりたくない訳じゃない。彼女と居るととても楽しいし、心も踊る。
ただ、怖いのだ。今の関係からどのように変化するのかが。経験が無くてわからないからこそ、躊躇ってしまう。もしかしたら、かえって気まずくなってしまうかもしれない。それが悩みなのだ。どうすればいいのやら──
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