第85話『恋バナ』
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肝試し騒動も終わり、いよいよ就寝時間となった。晴登たち1組3班は1つのテントの中で、5人で顔を突き合わすようにして寝袋に入っている。しかし天井から吊るされたランプには、未だ仄かな明かりが灯っていた。
「もう寝れる気しないんだが」
「同感」
というのも、騒動の終わりに山本の唐突な怪談を聞いてしまったせいで、就寝時間を超えても全員恐怖で眠れなくなってしまっていたのだ。夏の夜で暑いはずなのに、何だかむしろ寒気がする。
「な、なんか楽しい話題にしようぜ。ほら、明日ってスタンプラリーだろ?」
「もう山の中歩きたくない…」
「あぁっ! 柊君が!」
自分の嗅いだ匂いがまさか線香の匂いとも思わず、狐太郎は先程から恐怖とショックで打ちのめされていた。可哀想だが、何もかける言葉が見当たらない。
「そういえばスタンプラリーって、メンバーは班員じゃなくてもいいんだってな?」
「そうだね。3人から10人までの間で、自由に組んでいいんだって」
ここで話がまた変わった。
会話の通り、スタンプラリーではメンバーは班員に限らない。要は自分の仲の良い人たちと自由に組めるのだ。
班のままでやった方がイベントとしては正しいと思うのだが、自由に組める方が気が楽だから、晴登的には特に申し分はない。
「ちなみにそれって・・・男女は関係ないのか?」
「ないと思うけど、それがどうかしたの?」
「え!? い、いやぁ別に…?!」
晴登が訊き返すと、その班員はやけに慌てる。別に仲の良い女子と行くことに何ら問題はないはずだが、どうしてそこまで焦る必要があるのか。
「なんだなんだ? 恋バナか? 確かにキャンプの夜っつったらそれもアリだな!」
「そういうもの?」
「知らん! 俺に訊くな!」
もう1人の班員の言葉を聞いて晴登が伸太郎に訊くと、彼は勢いよく断ってきた。何か嫌な思い出でもあるのだろうか。
それにしても恋バナか。思えばしたことがなかったかもしれない。好きな人なんて今までいなかったし。
「おいおい、誰が狙いだ? 言いふらさないから言ってみろよ」
「いや、それは…!」
「ここまで来て日和んなよ。言えば、明日に協力してやらんこともないぞ?」
「う…」
班員の男子2人が話を進めていく中、晴登たちは置いてけぼりだ。狐太郎は未だに震えてるし、伸太郎に至っては寝ようとしている。
そんな時、渋っていた彼はついに口を開いた。
「…その、2組の戸部 優菜さんだよ…」
「えっ」
突然知っている名が出てきたので、晴登は思わず声を出して反応してしまう。
しかし納得はできる。晴登から見ても優菜は可愛いし、人気
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