第三章
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「あの子のお母さんは娘なのだよ」
「そうだったんですか」
「うちの犬を助けてくれて対応もしっかりしていたと聞いているよ」
男は弘明にこうも話した。
「全部ね、命の大事さもわかっていてお金のこともしっかりしていて孫を励ましてくれたこともね」
「そうでしたか」
「君は素晴らしい人だ」
男はこうも言った。
「ならだ」
「それならですか」
「是非当社に来て欲しい、いいだろうか」
「あの、ですが俺は」
「面接をすっぽかしたというのだね」
「そうしましたが」
「しかしそれは理由あってのこと」
男はそれはいいとした。
「命を助けてのことじゃないか」
「だからですか」
「いいよ、だからね」
それでというのだ。
「君がよかったらね」
「採用、ですか」
「そうさせてくれるかな」
「お願いします」
一も二もない返事だった、こうしてだった。
弘明の採用は決まった、そして。
その日男会社の社長に頼まれて病院までジロを引き取りに行って欲しいと言われて病院までの地図を渡された。そうしてだった。
病院に行くとあの子供がいて彼に言ってきた。
「あの時は有り難う」
「いいさ、あの時も言ったよな」
「命だね」
「それが大事だからな」
だからだというのだ。
「いいさ」
「そうなんだ」
「それよりも犬だけれどな」
「今日退院するから」
「今からだな」
「ジロを迎えるんだ」
「そうだな、じゃあな」
弘明は子供に応えてだった、その犬が出て来るのを待った、すると子供の目の前にあの犬が出て来た。
「ジロ」
「ワン」
子供は犬を見ると駆け寄り犬も尻尾を振って彼を迎えた、子供は犬の首を抱くとだった。
犬によかったねと何度も言った、そうして弘明に言った。
「ジロが助かったのは本当にね」
「俺のお陰か」
「そうだよ、本当に有り難うね」
「お礼はいいさ」
お陰で就職も決まったとは言葉の中に収めた。
「それは」
「そうなんだ」
「ああ、じゃあこの子を今からだな」
「お家にね」
「連れて行こうな」
「それじゃあね」
二人でこう話してだった。
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