第三章
[8]前話
「物凄く強いからね、けれど頭がいいんだ」
「頭がいいんですか」
「そう、だから無闇に人を襲ったり吠えたりしないし」
それにというのだ。
「怖がらせることもね」
「しないんですか」
「家族や護るべき人のことはわかって」
それでというのだ。
「その人を絶対に護るんだ」
「そうなんですね」
「だから警察や軍隊みたいに人を護る場所にいるんだ」
「人を護れるからですか」
「そうだよ」
「じゃあ僕ケントを怖がらなくていいんですね」
「全くね、むしろ可愛がってあげたらね」
そうしたらというのだ。
「いいから」
「そうですか」
「これからはそうしてあげるんだよ」
その人は賢人に笑顔で言った、そしてだった。
賢人はその人が自分達に笑顔で別れの言葉を告げて山の方に行ってからケントを見た、そしてケントにこう声をかけた。
「ケント、僕のことが好き?」
「ワンッ」
ケントは彼に顔を向けてその通りという風に応えた、そして尻尾もだった。
ぱたぱたと振った賢人も犬が尻尾を振る時は機嫌のいい証拠だと聞いてそうなんだとわかった。そうしてだった。
このキャンプの時から賢人はケントを怖がらなくなり触ったり撫でたりもする様になった。積極的に近付く様になった。
そして自分にケント、ドーベルマンである彼のことを話してくれた人のことを両親に話すとだった。
両親は賢人に笑顔で言った。
「いい人に出会えたな」
「よかったわね」
「お父さんとお母さんがカレー造ってる時にか」
「そんなお話を聞けたのね」
「その通りだ」
「それがドーベルマンなのよ」
そしてケントだというのだ。
「凄くいい番犬にもなってな」
「賢人を大事にしてくれてね」
「頼りになる優しい子だからな」
「賢人も大事にしてあげてね」
「うん、そうしていくね」
賢人は両親に頷いて応えた、そうしてだった。
家ではよくケントと一緒にいる様になった、彼はもうすっかりケントを大好きになっていて怖くなくなっていた。むしろ凄く親しみを感じる様になっていた。
ドーベルマンは怖い 完
2020・7・22
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