ちいさなしまのおはなし
夜の静寂に
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ず飛びついたチビモンに対して、訳の分からない言葉で何やら捲し立てていたことは、きっと一生忘れない。
あの時は訳の分からない言葉が耳に入ってきた驚きの方が強かったけれど、後からじわじわと怖くなったのだ。
だってやっと会えたパートナーが怖い形相で訳の分からない言葉で捲し立ててきたのだ、怖かったに決まっている。
ゴマモンも化け物扱いされた時はちょっと傷ついた、って丈に寂しそうな笑顔を見せて丈が平謝りすることになるが、それはそう遠くない未来の話である。
すぐに仲直りできたけれど、少なくとも大輔の第一印象は最悪だったに違いない。
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、ブイモンは躊躇する。
自分の“秘密”を打ち明けて、果たして大輔は受け止めてくれるのか、決心がどうしてもつかない。
──そしてそれは、思わぬ形で暴露されることとなる。
どうしようって考えあぐねているブイモンと、真っ直ぐブイモンを見つめる大輔に迫る、1つの陰。
2人は気づいていない。思いこんだら一直線の大輔の目にはブイモンしか映っていないし、ブイモンは俯いてしまっている。
……そのせいで、反応が遅れてしまったことを、後にアグモンは後悔した。
「なぁにしてんだ、お前ら!」
「うわっ」
静かに伸びてきた陰に、がっしりと横から首を掴まれた大輔は悲鳴を上げる。
誰だ、と思う前に引っ張られて、ほっぺたをむにぃってされた。
「たっ、太一さん!?」
見張り番をしている、太一だった。
薪の前で見張りをしていた太一だったが、眠気に負けそうになって顔を洗おうと島の縁に来たのだ。
その際に大輔とブイモンがいるのを見かけ、しかも深刻そうな表情を浮かべていたから、何かあったのだろうかと感づいたらしい。
ならば先輩として、ここは相談にのってやろうじゃないかとこっそり近づいてきたと。
大輔の首に回ったのは太一の腕で、頬に感じたむにっとした感触は太一が抱き寄せた際に頬を擦りつけてきたものだ。
太一はよく動くこの後輩がお気に入りで、揶揄っては全身を使ってきぃきぃ怒る後輩の柔らかい頬っぺたをむにむにしてやるのがマイブームだ。
両手で顔を挟んで、むにむにと捏ねくりまわしてやれば、またきぃきぃと怒る。
それに便乗して、彼の姉もよく大輔の頬をむにむにしている。
太一からすれば、ただのスキンシップだった。
勿論大輔にとっても、尊敬している先輩に構ってもらえる手段にすぎなかった。
だから太一は深刻な表情をしている大輔の緊張でも解してやろう、ぐらいの認識であった。
自分と後輩だけのスキンシップに、後輩のパートナーも混ぜてやろうと思っただけだったのだ。
まさかそれがとんでもないことを引き起こすなんて、考えても見なかった。
「ちょっ!太一さん!やめてくださいって!くすぐっ
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