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ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
夜の静寂に
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いていたお父さんを煩わせるのは忍びなかったのである。
いつもごめんな、って疲れた顔で頭を撫でてくれる父親の顔が先に浮かんでしまうのである。
教師には、もっと言えなかった。
先生の言うことをよく聞いて、勉強もスポーツも出来る、何の問題も起こさない優等生、と治の表面しか見ていなかった教師を、治は子どもながらに信用することが出来なかった。
体操服を泥だらけにされ、もう心が麻痺しかけてぼんやりとそれを眺めていた治を見た教師が、スポーツが好きなのはいいけれどもっと大切にしなきゃだめよ、帰ったらお母さんにごめんなさいしなさいね、って優しい笑顔を浮かべながら言ってきた時から、治は教師を見限った。
これがスポーツによる汚れか、態と汚されたのかの見わけもつかないような無能な教師なのだ、賢い治がさっさと切り捨てたのは当然である。
複数の人数に囲まれていた時だって、どう見たって仲良こよしの会話をしているのではないことは明白だったのに、治くんは友達が多いのねって言われた時は流石に鼻で笑いそうになった。
優等生の治が問題を起こすわけがないと、信じていた。
確かに治自身は問題を起こしていない。
治を取り巻く環境に問題が起こっていたのだ。
だが教師は言うことをよく聞き、勉強もスポーツも優秀な治しか見ていない。
先生にとっての「いい子」と言うのは、「都合のいい子」ということだということが、よーく分かった1年だった。



そして、転機が訪れる。
それは、治が3年生に上がった時のことである。
お台場小学校は3年生の時と5年生の時にクラス替えがある。
色んな子と仲良くなるため、なんて聞こえはいいが、いじめっ子と同じクラスになったら何の意味も成さない。
治を虐めていた子達は、皆治と同じクラスになった。
既に心が死にかけていた治は、ニヤニヤしながらいじめっ子達が近づいてきて、腕を引っ張って校舎裏に連れていかれても、最早何とも思わなかった。
子どもらしい、ボキャブラリーの乏しい罵詈雑言が、治に叩きつけられる。
ばか、とかあほ、とか幼稚園の子が言うような罵倒に、治はさっさと終わらないかなぁ、と心を無にしていた時であった。

ぽーん、と飛んできたサッカーボール。

え、と思った時には、いじめっ子の主犯格のこめかみ辺りにぶつけられていた。
すっ転ぶ主犯格に、ギョッとなった取り巻き達。
唖然とそれを見下ろしていた時に、太陽のような元気な声が響き渡った。

「3年生にもなってイジメかよ、カッコわりーな!」

声のした方を見やる。
特徴的な髪型にやんちゃを絵にかいたような男の子と、外はねのオレンジ髪が眩しい女の子だった。
脚を中途半端な位置で上げているのを見て、どうやらサッカーボールを蹴ったのは男の子らしいと気づいた。

「なっ、なっ、何す
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