判断
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ずつ薄くなっていた。
ドクンッ
「ぐっ!!」
どんどん早まっていく鼓動。それの正体がいまだにわからずティオスは何も為すことができない。
「おい!!どうしたというんだ!?」
致命傷を受けたわけでも、限界突破が必要になるほどの戦いをしたわけでもない。それなのに地面に落ちるほどの汗を流している彼を見て、天海は懸命に声をかける。
「ティオス・・・貴様が倒される様をこの場で見れないのは残念だが・・・」
彼らを見下ろすオーガストの体は今にも消えようとしていた。しかし、彼は役割を果たしたからなのか、清々しいといった表情を浮かべている。
「時間切れだ。あとのことは君たちに任せよう」
「オーガスト様!!」
徐々にその場から姿が消えていく彼にアイリーンが声をかける。今にも泣き出しそうな彼女たちの方を一瞥した彼は、小さく微笑みながらその場をあとにした。
「ヨザイネ・・・その体・・・」
一方、クリスティーナでも同様のことが起きていた。
「もう時間か・・・向こうに戻らなきゃいけなくなっちゃった」
寂しそうに言うものの、彼女の顔はどこか晴れやかだった。それは役割を果たしたからなのだと、その場にいた全員が納得した。
「お義・・・ありがと、ヨザイネ」
「これでレオンが生き返っているはずなんだよな?」
「えぇ・・・たぶん・・・」
やっぱり最後の小声がどうも気になるが、誰もそれを攻めることはない。彼女は皆の命を救い、そしてまた自分たちに希望をもたらすためにこの場に戻ってきてくれたのだから。
「私は本当に生き返ったのか見届けることができない。無責任で悪いけど、あとはあなたたちに任せるわ」
「待ってくれ」
今にも消えそうなヨザイネ。そんな彼女を呼び止めるグラシアン。
「シリルに何か伝えることはないか?」
彼女はその言葉に思わずドキッとしてしまった。自分たちの危機的状況にも関わらず、最後に間近で子供の姿を見られなかった母に対してのわずかながらの慈悲。この思いやりに思わず笑ってしまった。
「ないわ」
スパッと答える彼女。意表を突かれたグラシアンたちは思わず目を見開いた。
「あの子が歩んできた道に私はいなかった。成長する姿を見れただけで十分なの。だから・・・」
少女の目から溢れていく雫。彼女はそれを拭うことなく、みるみる薄くなっていく。
「私はあなたたちを信じる。それだけで十分よ」
それだけ言い残して姿を消したヨザイネ。残された者たちは彼女の気持ちを察してか、その後は無言で戦場へと戻っていった。
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