第百六十三話 治の仕組みその十
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「そうするか」
「そうね、しかしこうして飲んでると」
奈央は鍋の中の河豚、あらのところで適度に脂も乗っている河豚の中でもかなり美味い部分を食べつつ言った。
「身体もね」
「労りたくなるな」
「ここ毎日飲んでるから」
だからだというのだ。
「気をつけないとね」
「時々飲まない日も必要か」
「そうも思うわ」
「そうだな」
実際にとだ、英雄は奈央の言葉に頷いた。
「そういえば俺もだ」
「毎日飲んでるわね」
「ああ、肴は色々だが」
それでもとだ、やはり飲みつつ言う。杯の中の酒は自分で注いでいてなくなることはない。とかく飲んでいる。
「飲むことはな」
「変わっていないわね」
「それはな、これではな」
「身体を壊すこともあるわよ」
「酒は薬にもなるが」
それでもというのだ。
「過ぎるとな」
「毒になるからね」
「神変鬼毒とあるが」
源頼光達が酒呑童子達に飲ませた神から授かった酒だ、神や人が飲んでも何もならないが鬼にとっては毒となる酒だ。
「まさにな」
「過ぎたらね」
「酒は毒となるからな」
「そう、だからね」
「俺達もだな」
「時々でも飲まない日をもうけて」
そしてというのだ。
「飲まないこともね」
「大事だな」
「そう思うわ」
実際にというのだ。
「それはね」
「なら明日はな」
「飲まないのね」
「そうする、今は飲んでいるが」
それでもというのだ。
「明日はな、そしてな」
「時々は」
「飲まない日を置いてだ」
そうしてというのだ。
「身体を労わるか」
「そうしようね」
「言われると俺達はな」
「こっちの世界では殆ど毎日飲んでるわね」
「旅の時からそうだった」
英雄は旗揚げ前のことも思い出した、するとその時からだった。
「何かあると飲んでだ」
「飲まない日はよね」
「殆どなかった、遊郭に行くとな」
英雄が好きなそうした店にだ。
「まさにな」
「お酒によね」
「女にな、そちらの意味でだ」
「酒池肉林だったわね」
「実に楽しいが」
それでもというのだった。
「思えばな」
「そうした生活はね」
「身体にはよくない」
「酒と女は敵なり」
桜子は笑って言った。
「俗に言うね」
「そうだな」
「ここで是非敵に会ってみたい」
「太田蜀山人のネタだ」
江戸時代後期の人物だ、武士であるが笑いの才能がありこうした言葉やネタを多く残している。尚江戸ではこのセンスが理解されず落書きを批判されて大坂に左遷されそこでは認められたという逸話がある。
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