ちいさなしまのおはなし
太陽の咆哮
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用しない場所であることは明白であった。
ここでは自分達の世界の常識など、一切通用しないのである。
だが、非常識の中で探し当てた常識が目の前にあるのなら、それに縋ってみたくなるのは当然だ。
少し考えて、太一はポケットをまさぐり、小銭を探した。
「太一さん、何しているんですか?」
「ん?いや、電話かけてみようかと思って」
「そんな、よく見るタイプの電話ボックスとは言え、通じるかも分からないのに、よくもまあ臆せずそんなことができるな……」
「いいじゃないか、太一らしくて。僕らもかけてみよう」
無事10円を発見した太一は、コインの挿入口にお金を入れて受話器を取り、自分の家の電話番号に当たる数字をぽちぽちと押した。
そんな太一を見た他の子ども達も、空いている電話ボックスへと向かう。
ぷるるる、と鳴る電話の向こう。がちゃ、と受話器が取られた音がしたので、太一は電話口の向こうにいるであろう母親を想定していたのだけれど。
「…何だこれ」
「お兄ちゃん?どうしたの?」
兄の行動を見守っていたヒカリが問いかけると、太一は首を振った。
どういうことだろう、って思っていると、太一は無言でヒカリの耳元に受話器を持って行った。
そして、理解した。どうやらこの電話は使えないらしい。
だって電話口から聞こえてくるのは、総てでたらめな情報ばかりなのだ。
午前35時?明日の天気はアイスクリーム?電波、超音波?
他のメンバーも首を傾げていた。
「……大輔くん、どう?」
「ダメ」
空がかけた後の電話を使わせてもらい、大輔もお家の電話番号を押してかけてみたけれど、出てきたのはお姉ちゃんではなく、機械的な女性の音声であった。
治お兄ちゃんがかけているのを傍らで見守っていた賢が、大輔に尋ねてきたから、肩を落としながら首を振る。
そっかぁ、って残念そうな表情を浮かべて、お兄ちゃんにその旨を伝えた。
お姉ちゃんが出なかった、と言う事実に打ちのめされて大輔は見るからにシュンとなってしまう。
受話器を置いて、ぐるりと子ども達を見渡した。
尊敬しているサッカー部の先輩が4人と、お姉ちゃんと同じ学年で同じクラスの先輩、接点が少ない4年生の先輩と、学校で一番仲のいい同い年の女の子と、友達になったばかりの男の子。
はあ、と無意識に溜息が漏れる。
『……ダイスケ?』
「……んぁ?何だよ、ブイモン?」
『何だよって……溜息なんか吐いて、どうしたの?何かあった?』
「……何でもねぇよ。ただ電話に誰も出なかったから、がっかりしただけだ」
嘘である。いや、誰も出てくれなかったことはショックではあったが……それだけではないのだ。
大輔はもう一度子ども達の方を見やる。
視線の先にいたのは、太一とヒカリ、そして治と賢。
不安そうにして
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