ちいさなしまのおはなし
太陽の咆哮
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ブモンは何か知っているのかい?それは、僕が聞いたら答えてくれるのかい?」
『……え、っと』
「おや、その様子だと知っているみたいだね」
ガブモンの気まずそうな表情を見抜いて、治は笑う。
しまった、とガブモンは口を隠すように両手で抑えた。
器用とは正反対の性格であるガブモンでは、上手く誤魔化すことが出来ない。
どうしようどうしよう、としどろもどろになるけれど、治はそれ以上何も聞いてこなかった。
ガブモンの頭上に沢山の『?』が浮かび、治を見上げると困ったような笑みを浮かべる。
「向こうが話したくなったら、話してくれるだろう?こういうのは無理やり聞き出したってよくないからね」
『……そう、だね』
ほ、とガブモンは胸を撫で下ろした。
知らないのか、と聞かれたら嘘になるが、これはブイモンの問題なので、自分が言うべきことではないのである。
大輔に対するブイモンの様子から多分大丈夫なのかな、とは思っているが飽くまでも“多分”、“だろう”に過ぎないので、下手なことは言えない。
治が追及してくるタイプでなくてよかった、とガブモンは思った。
海が、見えてきた。
さて、皆さまは不条理という言葉の意味をご存じだろうか。
不条理とは筋道が通らないこと、また道理に合わないことという意味である。
人間社会で生きていくためには、ガチガチに凝り固まった常識とルールに縛られなければならない。
目上の人には敬語を使うとか、自分が悪くなくても頭を下げなければならないことがあるとか、周りに合わせるために空気を読まなければならないとか、とにかく肩が凝るような思いをしなければ、一人前と認めてもらえないのである。
だから自分の常識に当てはまらないものは、人は断固として認めない。
そうすると自分が今まで信じていた世界が音を立てて崩れてしまうからだ。
人は脆く、壊れやすい。
だから太一達は、浜辺に当然のように建てられている電話ボックスを見て、唖然とするのだった。
川沿いを歩いてしばらくすれば、見えてきたのは切り取られた森の向こうに広がる大海原。
風に乗って漂ってきた潮の香りに子ども達は顔を見合わせ、眼前に広がる海へと走り出した。
そして、唖然となる。
柔らかい砂浜に不自然なぐらいに自然に鎮座している、複数の電話ボックス。
電話線は何処だとか、電気はどうやって引いているのだとか、そんな常識はとっくの昔に捨て去ってしまった。
だってここは異世界である。自分達の世界ではないのである。
扉を開けて、中に入ってよく観察してみれば、近所によくあるタイプの電話であることはすぐに分かったけれど、デジモンという自分達の世界ではまず見ない生き物がいる時点で、太一達がこれまで培ってきた常識など到底通
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