ちいさなしまのおはなし
太陽の咆哮
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すぐったい、とブイモンは身をよじりながら笑う。
ああ、そう言えば。
「さっきの、カッコよかったなブイモン!」
『?さっきのって?』
「クワガーモンにキックした時だよ!えっと、パルモン?の蔓の上走ってった時はビックリしたけど、その後ぴょーんってジャンプして、キックしてただろ!」
すっげーカッコよかった!って大輔ははしゃぐ。
褒められているのだと気づいたブイモンは、えっへんって胸を張った。
「……まあ、それはひとまず置いておこう。それより、これからどうする?」
どうして姿が変わったのか、何故それが子ども達のお陰なのか、子ども達にもデジモン達にも分からない今、これ以上議論しても仕方がないと判断した治は、話題を変えた。
「元の場所に戻ろう!大人達が助けに来るのを待つんだ!」
そう言ったのは、丈だった。
迷子になった時、大人とはぐれた時は、すれ違いにならないようにその場でじっとしているのがセオリーである。
クワガーモンのせいでだいぶ彼方此方走り回ってしまった挙句、崖から落とされ川に流されてしまったが、元いた場所まで戻るべきだと、丈はそう主張したが……。
「……戻るって言ったってなぁ?」
「随分流されちゃったわよ?」
太一と空がそう言って自分達が流された川の向こうの聳え立つ山を見上げた。
自分達が何処にいたのかも、最早覚えていない。
クワガーモンに追いかけられてあっちへこっちへ走り回って、落ちた川は何度も蛇行して、方向感覚も狂ってしまっている。
戻るなんて言葉では簡単に言うが、どうやって戻るというのか。
考え込んでいた治が口を開いたのは、その時だった。
「……思ったんだけど、ここってキャンプ場の近くじゃないんじゃないか?」
「え?」
「いや、もっと言うと日本ですらない、むしろ地球ですらないんじゃないかと、僕は思う」
「お、治何言ってるんだい?」
顎に指をかけるその姿は様になっており、まさしく天才少年に相応しい佇まいだった。
しかしいきなり突拍子もないことを言い出した治に、丈だけでなく他の子ども達も狼狽えていた。
治ほどの天才少年が、いきなり日本でも地球でもないと言い出したのだから、無理もないだろう。
「治先輩、一体どういう……?」
「ん?簡単さ。まず周りの景色。キャンプ場の山は岩肌なんかじゃなかった。生えている樹も亜熱帯の植物みたいだなぁと思ったけれど、近くで見てみると微妙に違ってたし、何よりこの子達の存在が、ここは日本どころか地球じゃないって教えてくれた。趣味で生き物図鑑をよく眺めていたけれど、どの図鑑にもこの子達の姿はなかったし、新種だとしたらテレビで大々的に報道されているけれど、そんな特集見たことあったかい?異世界だって考えた方がずっと自然だよ」
「……確かに」
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