第三章
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「本当に初期だから」
「大丈夫なんだ」
「命に別状はないわ」
そこまではいっていないというのだ、実際に医師にはそう言われていてそれで彼女自身落ち着いている。
「だから恭平も安心してね」
「そこまで言うなら」
「ニャア」
「ちゃちゃもいるしね」
ここで母はにこりと笑ってこう言った。
「この娘もね、アニマルヒーリングってあるし」
「アニマルヒーリング?」
「動物が一緒にいたら癒されるのよ」
息子にそのアニマルヒーリングの話をした。
「だからいいのよ」
「実際ちゃちゃには俺も癒されてるよ」
恭平にしてもだった。
「何かと」
「そうでしょ。病は気からっていうし」
「落ち込んでばかりだとかえって体調崩すんだね」
「ストレスも感じるしね」
木が落ち込んでいる、それだけでというのだ。
「だからよ」
「ちゃちゃが一緒にいたら癌にもいいんだ」
「絶対にそうよ。いつも和まさせられて癒されているから」
ちゃちゃ、彼女にというのだ。
「絶対によ」
「お母さん大丈夫なんだ」
「だから安心してね」
こう言ってだ、母は息子に落ち着く様に言っていた。そして実際にだった。
母は退院後何事もなく過ごしていってそうしてだった。
恭平が大学を卒業し就職した頃も癌は再発しなかった、そんなことは何もなかったかの様に日常を過ごし。
恭平が就職して一年目の夏に家でビールを飲んでいる時にこう言われた。
「俺が高校の時母さん癌になって」
「どうなるかって思ったのね」
「あれから再発してないね」
「だから初期の初期に見付かってすぐに手術したし」
「ちゃちゃがいれくれるからだね」
「大丈夫なのよ」
枝豆と一緒にビールを飲んでいる息子に話した。
「そうなのよ」
「そういうことなんだ」
「そうよ、だからこれからもね」
「安心してだね」
「頑張っていくからね、お母さんも」
「ちゃちゃがいてだな」
父も言ってきた、父は焼酎をロックで飲んでいる。
「本当に何かと助かってるな」
「私もね」
「そうだな、皆和まさせられて癒されてな」
「お陰で気が楽でね」
「皆幸せに過ごせているな」
「本当にね。ちゃちゃがいてこそよ」
母は息子のすぐ傍、テーブルの上のそこで丸くなっているちゃちゃを見て言った。
「うちは皆幸せよ」
「母さんも癌になったけれど何もなかったしな」
「じゃあちゃちゃこれからも宜しくな」
息子はビールを飲みつつちゃちゃに言った、ちゃちゃは今は声では返事をしなかったが。
尻尾をぱたりと動かした、これがちゃちゃの今の返事だった。一家はその彼女を見て優しい笑顔になった。
病は気からで 完
2020・7・22
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