第九十六話 尼子家の騒動その四
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「ですから」
「いえ、遠慮はです」
元就はそう言う母にすぐに言葉を返した。
「無用です」
「贅沢をしてもいいですか」
「そうです、義母上は」
「それが親孝行だからですか」
「そう言われますと」
言葉を選ぼうかと思った、だがその前にだった。
杉大方は笑ってこう言った。
「その気持ちだけで充分なのです」
「気持ちだけで、ですか」
「それが親というものです」
こう元就に言うのだった。
「ですから」
「これ以上はですか」
「いりませぬ、私にくれるよりは」
それよりもというのだ。
「貴方が飲まれるか奥方や子供達若しくは家臣達ひいては」
「民達にですか」
「飲ませるのです」
「それか飲める様にせよと」
「左様です」
こう言うのだった。
「宜しいですね」
「そう言われますか」
「はい、私はもう気持ちを充分に頂きましたので」
だからだというのだ。
「これで、です」
「よいというのですね」
「今申し上げた通りです」
気持ちだけで充分だというのだ。
「そういうことで」
「そうですか」
「はい、それではです」
「お茶はですか」
「頂いた分は飲ませて頂きますが」
それでもというのだ。
「これ以上はです」
「左様ですか」
「はい、その様に」
こう言ってだった、杉大方は元就から貰った分の茶は飲んだがそれ以上は一切求めなかった。それで元就も茶はそれでよしとした。
だが義母のその想いを受取り彼は妻に話した。
「あれこそがな」
「親だというのですね」
「そう思う、だからわしもな」
「義母上様の様にですか」
「したい、とはいってもわしは父であるからな」
だからだというのだ。
「義母上の様には出来ぬ」
「だからですね」
「お主がな」
「義母上様の様にですか」
「してくれるか」
「はい」
妻は夫に微笑んで答えた。
「それでは」
「うむ、それではな」
「そうした母親になります」
「それではな」
「はい、そして殿もですね」
「父としてな」
そちらの親としてというのだ。
「務めを果たしたい」
「そうお考えですか」
「うむ、その様にする」
「それでは」
「そしてな」
それでとだ、ここで元就はこう言った。
「家のことはな」
「私がですね」
「主に任せたい、そうしてくれるか」
「それが母の務めですので」
それならとだ、妻も笑顔で応えた。
「そうさせて頂きます」
「それではな」
こう話してだった、元就は家のことは妻に任せてそうして一国の主としての務めに入った。そのうえで敵である尼子家を見ていたが。
尼子家に仕掛けようとしてだった。その尼子家を見て家臣達に言った。
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