四十 柔拳VS蛙組み手
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た応える。今までどこか馬鹿にしていた彼女に自身の話を聞かせる権利を与える。心の片隅で落ちこぼれだと決めつけていた波風ナルをネジはようやく認めた。
「日向の憎しみの運命を!」
自分の対戦相手として相応しい人物だと。
清々しいほど晴れ渡った空を仰ぐ。会場全体を覆う青空を睨みつけてから、ネジは視線をナルに据えた。
ヒナタに強い影響を与え、『まっすぐ自分の言葉は曲げない』という忍道を抱き、そして予選試合で見せた彼女の強い信念の元となった人物。ヒナタの憧れの人間。
そんな彼女を前にしてネジの胸中を占めるのは遣り切れない思いだけだった。鬱積する恨みや憎しみ。幼き頃から心にわだかまる怨恨はヒナタだけではなく、彼女の味方をするナルへをもぶつけてしまう。さながらそれは子どもが起こす癇癪染みた行為だったが、降り積もった鬱憤の捌け口をネジは止める事が出来なかった。
日向一族。彼らが宿す瞳には特殊な力が宿っている。
数百メートル先を見通す視力、ほぼ全方向を見渡せる視野、透視や経絡系・点穴までも見極める洞察力。
これらの瞳術を利用し、攻撃として編み出した術が柔拳である。しかしながら特異な血継限界を持つが故、その能力の秘密を探ろうとする者が後を絶たない。
そこで一族を、白眼を後世に残す宗家とその宗家を守る分家の二つに分断し、宗家のみが秘伝忍術たる【呪印術】を扱えるよう系統立てた。この【呪印術】により額に印を刻まれた者は自身の命を握られていると言っても過言ではない。宗家のみが知る秘印により被術者の脳神経は侵され、破壊される事もあり得る。
いつ殺されるかわからぬという恐怖。どうあっても逃れられない運命に縛られたその証は、『籠の中の鳥』を意味する。そして皮肉な事にこの忌まわしい印が消えるのは本当の死だけ。そこでようやく呪印は己の役目を全うする。死体が外部に渡っても秘密を知られぬように白眼の能力を封印して。
白眼の機密保持と分家の支配、両方を兼ね備えているこの印からは逃れるすべは無い。
一族の中でも選ばれた者のみが宗家として生き、宗家を守る為だけに分家は生きる。
ネジはまず一族のこの在り方に嫌悪感を抱いた。
この日向と日陰の存在たる宗家・分家をもっともよく表象するのは、ヒナタの父である日向ヒアシとネジの父――日向ヒザシ。双子の兄弟である彼らは、容姿は勿論名も似ている。
どちらも雲間から洩れる日光を表す名。しかしながら二人の生き様は先に生まれたか後に生まれたかで大きく食い違う。
如何に同等の力を以ってしても、双子と言えども、長男として生まれた宗家のヒアシと次男として生まれた分家のヒザシは決して等しくなかった。
同じ一族同士だというのに激しい格差は、
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