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ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
そして彼らは巡り会う
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とヒカリは慌てて大輔を宥める。
が、そんなことをしている場合でもない。
大きなクワガタ……太一達曰くクワガーモンが、上空から滑空して太一達に襲い掛かってくる。
頭上すれすれまで降りてきたクワガーモンは、太一達の真上を通り過ぎると再び上昇して、大きなハサミで樹々をなぎ倒して行った。

『ミミ、だいじょうぶ?』
「うう、タネモン……」

恐怖と疲労で座り込んだミミに、タネモンと呼ばれたデジモンが気づかわし気に声をかける。
空はそんなミミに駆け寄って、背中を優しく擦ってやった。
しかし息つく間もなく、クワガーモンは子ども達に執拗に襲い掛かってくる。
大きく旋回して再び襲い掛かってきたクワガーモンから逃げるべく、子ども達は走り出す。
デジモン達も、その小さな身体をぴょこんぴょこんと跳ねさせながら子ども達の後を追った。
背後から迫ってくる、樹々をなぎ倒す音に、治が伏せろと叫んだ。
上級生が下級生を庇う形で倒れ込むように伏せた上空を、クワガーモンが通り過ぎていく。

『きゃう!』
「チビモン!」

転んだ勢いとクワガーモンが通過した際に巻き起こった風に呷られ、チビモンがころころと転がっていくのが見えたヒカリは、クワガーモンが通り過ぎたのを見計らって、思いっきりずっこけた大輔の代わりにチビモンに駆け寄っていく。

「大丈夫?」

べちょ、と地面に思いっきり顔を打ち付けたらしいチビモンは、ううって涙目になって短い手で顔を擦っているのを、ヒカリはひょいと持ち上げた。
顔の真ん中がちょっとだけ赤くなっている。
砂まみれになっている顔をふるふるさせて埃を払ったチビモンが、ヒカリを見て、ヒカリに抱きあげられていると理解して、ひっと小さく呻いた。

怯えた、表情。

見開かれた赤い目は小刻みに揺れながらヒカリを見つめている。
そんなチビモンの反応に驚いたヒカリは思わず黙ってチビモンを見下ろしたが、何かに気づいたチビモンの怯えた表情はすぐに引っ込み、数度瞬きをした。
自分の身体を抱きあげているヒカリの手をキョトキョトと見やって、しきりに首を傾げている。

「どうしたの、チビモン?」
『……う〜ん?』
「悪い、ヒカリちゃん。チビモンありがとな。」
「あ、ううん。大丈夫よ。ニャロモンは?」
『わたしもへいき!』
「な、何なんだよ、これは!」

泣き言を言っている丈のすぐ近くに、クワガーモンが切り落とした枝が落ちてきて、ひっと短い悲鳴を上げた。
もう訳が分からない。ここは一体何なのだ。一体何故自分達はこんなところにいるのだ。答えてくれる者は、勿論いない。
いきなり飛ばされて、デジモンだと、パートナーだと名乗る不思議な生き物が自分達の後をついてきて、その上大きな昆虫に追い回されて、丈の精神はもう限界である。

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