ちいさなしまのおはなし
そして彼らは巡り会う
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こそ至っていないものの、バランスを崩すには十分だったようで、クワガーモンは森の樹々へと突っ込んで姿が見えなくなった。
助かった、なんて誰も思わなかった。
誰も、喜ばなかった。
だって自分を護ろうと突っ込んでいった小さな生き物達が、そのせいで倒れてしまったのだから。
膝小僧を擦りむいた大輔は、痛いのを我慢して足を引き摺りながらチビモンの下へ歩を進める。
ヒカリも、賢も、そして他の子ども達も。
ここに来てからずっとずっと、自分の後をひよこみたいにくっついてきていたデジモン達の下へ行って、ぐったりしている身体をそっと抱き起す。
「馬鹿野郎!何で無茶したんだ!!」
『だって……ぼくはタイチをまもらなくちゃ……』
「……コロモン」
こんな小さな身体で、何が護るだ。クワガーモンに吹っ飛ばされたのに。
そう言えたら、どれだけよかっただろうか。
言えなかった。言えるわけが、なかった。
太一を待っていたと、目が覚めてからずっとずっと自分の後をついてきてくれた、この小さな生き物に、最初にクワガーモンに襲われた時にも、自分を護ろうと小さな身体で果敢に攻めていった小さな戦士に、そんな酷いことを言えなかった。
他の子ども達も、同様だった。
会ったばかりなのに、お互いのことなんか何も知らないはずなのに、デジモン達は子ども達の名前を間違うことなく呼んで、慕ってきた。
訝しんだり、邪険に扱う者もいたのに、デジモン達はそれを気にするそぶりなんか全然見せない
何故、こうもデジモン達は子供達のためにあんなに必死になれるのだろうか。
「チビモン……!」
「ニャロモン、どうして……?」
ぐったりとしているチビモンとニャロモンをそれぞれ抱き上げる大輔とヒカリ。
うう、と呻きながらゆっくりと目を開いたチビモンとニャロモンは……笑っていた。
不意に、大輔の脳内に初めて会った時の記憶が蘇る。
ちっこくって、大輔が片腕で抱き上げても全然余裕で、大輔が首から下げているホイッスルを気に入って、ずっとぴ、ぴ、ぴ、って吹いて遊んでいた姿がとっても可愛くて、むしろ自分が護ってやらなければと思っていたのに。
クワガーモンに追いかけられて逃げることしか出来なかった大輔を助けてくれたのは、護らなければと思っていたチビモンだった。
あの太一だって背を向けることしかなかったのに。
「……ああ!」
悲痛の声を上げたのは、誰だっただろうか。
低く空気を擦るような唸り声と共に、クワガーモンが突っ込んでいった辺りの樹々がガサガサと揺れる。
爆発でも起こったかのように、樹々が根元から折れて上空へと舞い上がる。
シャキン、シャキン、と頭の先についているハサミをこれ見よがしに見せつけて鳴らして、子ども達に威嚇してくる。
クワガーモンが退路を塞いでしまっている
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