暁 〜小説投稿サイト〜
ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
そして彼らは巡り会う
[12/17]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ーモン。
あまりにも総てが理不尽だった。

どうして、どうして、どうして。

そんなことばかりが頭の中を駆け巡り、太一達の眼前に広がる行き止まりが、更なる絶望へと追いやる。
森を抜ける。背後から迫ってくる、樹々がなぎ倒される音から早く逃れたかった子ども達は、開けた眼前の先に続く道がないと知って、愕然となった。
鬱蒼と覆い茂っていた森から抜けて広がる青空が、今は憎たらしい。
太一が代表して崖の先に行き、下を覗き込んだ。
眼前に流れる川、飛び込めば助かるかもしれないが、まだ小学生の子ども達が飛び込むには高すぎた。
太一と治、空だけならきっと恐怖を押し殺して飛び降りただろう。
でもそこにいるのは太一達だけじゃないのだ。
最年長なのに頼りない丈、女の子を体現しているミミ、精密機器を抱えている光子郎、そして何よりも護らなければならない最年少の2年生が3人。
全員に飛び込めなんて無茶振りを言うほど、太一も愚かではない。

「こっちはダメだ!別の道を探そう!」
「べ、別の道って……!」

しかし絶望は待ってくれない。どぉん、と背後の樹々が吹き飛んで、子ども達は慌てて崖の先へと逃げた。
飛び出してくる、毒々しい赤のクワガタ虫。
咄嗟に伏せた太一の上を通り過ぎていくのを見た空は、今のうちに逃げようとみんなに声をかけた。
しかし

「っ、いって……!」
『ダイシュケ!?』
「大輔くん!?」

立ち上がろうとした大輔だったが、膝に激痛を感じてしゃがみこんでしまった。
膝から血が出ている。先程転んだ時に擦りむいたのだろうか。
すぐ傍にいた丈が、大丈夫かと声をかけてくれた。

「太一!!後ろ!!」

大輔に気を取られていた子ども達は、気づかなかった。
上空を旋回して再度襲い掛かってきたクワガーモンが、太一に迫っていることに。
治が真っ先に気づいて声を張り上げたから、太一は慌てて立ち上がって走り出した。
しかし、クワガーモンは、すぐそこにまで迫っている。

治の視界の端を、薄いピンクの丸い陰が横切った。

『タイチィ!』

コロモンだった。弾力のある身体を利用し、コロモンは大きく跳ぶ。
足を縺れさせながら子ども達の下へ駆け寄ってくる太一の横を通りすぎ、コロモンは頬を膨らませてピンク色の泡をクワガーモンに向かって放った。
ぺちょ、という情けない音を出しただけで、クワガーモンにダメージは入っていない。
それどころかコロモンの小さな身体は、巨大なクワガーモンの頭部で呆気なく吹っ飛ばされていく。
ああ、と太一は悲痛の声を上げながら、自分を護ろうとしてくれた小さな生き物の下へと駆け寄って行った。
そして、コロモンの後に続けと言わんばかりに、他のデジモン達も飛び出して行く。
一斉に吐いた泡は、ダメージに
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ