ちいさなしまのおはなし
そして彼らは巡り会う
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、照り付ける太陽のせいだけではないだろう。
「うぅん……」
「!ヒカリちゃん!」
何処だ、ここは。明らかにキャンプ場ではない、見たことのない自然の中に放り出されて呆然としていた大輔は、隣で呻き声が聞こえたので慌ててヒカリを揺り起こした。
ゆっくりと開かれる目に、大輔はほっと胸を撫で下ろす。
大輔と手を繋いだまま起き上がったヒカリは、しょぼしょぼする目を優しく擦り、目の前にいる大輔を見た。
「……だいすけくん?」
「Good morning」
ぐっもーにん。知っている、おはようって意味だ。朝、一緒に学校に行く時、大輔はいつもそう言って元気よく挨拶する。
だからヒカリもおはよう、じゃなくてぐっもーにん、って返す。
朝の恒例行事となっている挨拶に、ヒカリは反射的にぐっもーにんと言った。
「……あれ?私、いつの間に寝て……?」
だんだんとクリアになっていく思考で、ヒカリはふと考える。
今日は子ども会のサマーキャンプの日で、大輔くんと同じ班になったから英語と日本語を教え合いながら夕飯であるカレーを作っていたはずだ。
途中でお母さんが来て、太一探してきてってお願いされたから、大輔と2人ではーいっていい子の返事をして、行方をくらましちゃったお兄ちゃんを探しに行っていたはずだった。
途中で吹雪にあって、みんなでお堂に避難して、それで、それで……。
「……ここ、どこ?」
記憶が鮮明になってきたヒカリは、辺りを見渡してようやく気づいた。
ここは、爽やかな風と穏やかな川の流れる音、深緑に彩られた樹々の上に広がる天色の空のキャンプ場ではない。
周りに生えている樹々や風の匂いは知っているものと全然違っていて、ヒカリはパニックに陥りかけるが、ぎゅっとヒカリの左手を握ってくれる暖かいものを思い出して、我に返った。
「ヒカリちゃん?」
「……あ」
「大丈夫?」
「……うん」
向き合う形で座り込んでいた大輔が、不安の色を浮かべたヒカリの顔を覗き込む。
茶色い目がじっとヒカリを見つめてくるので、波立っていたヒカリの心は徐々に落ち着きを取り戻した。
改めて周りを見渡す。何度見つめ直しても、ここは大輔達が来たキャンプ場でないのは明確なのだが、だとすればここは一体何処なのだろうか、という疑問が湧いてくる。
立ち上がった大輔につられて、ヒカリも両足で地面を踏みしめた。
繋げれている手に、無意識に力が籠る。
大輔とヒカリの身長を合わせてもまだ高い樹を見上げ、そしてハッと気づいた。
太一が、いない。
それだけじゃない。あのお堂に一緒に避難していた面々が、周りにいないのだ。
記憶が確かなら、大輔とヒカリと一緒に突如として立ち上がった荒波に飲み込まれたはずなのに。
どうしようどうしよう、って2人し
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