ちいさなしまのおはなし
始まりの夏
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は、そんな光子郎の呟きをスルーして同じように外に飛び出して行く。
雪なんてほぼ初めてに等しい大輔や、どっちのお祖父ちゃんお祖母ちゃんも雪が降る地域に住んでいないヒカリがはしゃぐには十分だった。
手を繋いだまま、せーのでお堂から降りて、ぼす、と雪の上に着地する。
自重で雪の中にめり込み、それだけで2人は楽しくて仕方がなかった。
わあ、と子ども達が歓声を上げる。
しゃがみこんで雪の感触を楽しんでいた大輔とヒカリは、何事かと顔を上げた。
先に外に出ていたお兄ちゃんや先輩達が、みんな揃って空を見上げていた。
何だろう、って大輔とヒカリは顔を見合わせて、また手を繋いでとっとっとっ、と先輩達に歩み寄る。
「こうしろー!早く来いよー!」
「太一さん、治さん、空さん、どうしたの?」
「ほら、見て」
未だお堂の中にいる光子郎を呼ぶ太一。大輔がよく見知った先輩達に尋ねると、空が優しい声色で上空を指差した。
空の指の先を辿って目線を上空に向ければ。
「……わあ!」
「Beautiful!」
感嘆の声を漏らすヒカリと、興奮してその場でジャンプする大輔。
そこには、空一杯に薄いヴェールのようなカーテンが広がっていた。
光子郎も遅れて合流して、大輔があれ何あれ何って上級生達に聞くと、カーテンを見つめたままの空が、オーロラだと教えてくれた。
オーロラとは、天体の極域近辺に見られる大気の発光現象のことである。
名前の由来はローマ神話の夜明けの女神であるアウローラ。知性の光、創造性の光が到来する時のシンボルと言われている。
発生の原理は太陽風のプラズマが地球の磁力線に沿って高速で降下し、待機の酸素原子や窒素原子は励起することによって発光すると考えられている。
日本でも観測は可能だが、主に南極・北極付近で見られる現象のため、日本で観測できる場所も限られてくる。
つまり、東京の端っことは言え、日本のほぼど真ん中でオーロラを見られるはずがないのだ。
治と光子郎がそう指摘すれば、知識として薄らと知っている空がそうなんだよね……と困ったような表情を浮かべて呟いた。
「……早く、大人達のいるキャンプ場に戻らなきゃ」
あり得ない光景に、何か不吉なものを感じた最年長である丈が、そう呟いた。
そうだな、と治も眉を顰める。太一や空、ミミ達と違って見たことのないオーロラをただ綺麗だなーで済ませるほど、治は莫迦ではない。
「風邪引いちゃつまらないからな……吹雪も止んだし、太一、戻ろう」
「……そうだなぁ」
治が言うなら、と太一もオーロラから目を離し、キャンプ場に戻ろうと足を1歩踏み出した時だった。
彼らの長い、そして短い冒険が幕を開ける。
あ、って声を漏らしたのは大輔だった。
大輔と手
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